◆日本語の自己終端性と「です・ます・から・だから」
日本語のsyntax自己終端性
日本語はsyntax自己終端性を持ちます。
- 僕は昨日の朝運動のため犬と一緒に公園へ
走った - I ran to the park with my dog yesterday morning to get some exercise.
この例で、日本語は構文の終端が動詞の終止形で示されています。
一方英語は途中の各所で文形式として成り立ちます。途中で成り立つということは各位置が開放端になっており、開放端に要素が付加され、それ自体がさらに開放端を持つ形です。
- I ran
- I ran to the park
- I ran to the park with my dog
- I ran to the park with my dog yesterday
- I ran to the park with my dog yesterday morning
- I ran to the park with my dog yesterday morning to get some exercise
英語の終端は構文構造としてではなく構文外要素であるピリオドで与えられます。音声の場合大きな間やイントネーションや態度で示します。
日本語では、構文そのものが終端します。
- 僕は
走った - 僕は公園へ
走った - 僕は犬と一緒に公園へ
走った - 僕は昨日犬と一緒に公園へ
走った - 僕は昨日の朝犬と一緒に公園へ
走った - 僕は昨日の朝運動のため犬と一緒に公園へ
走った
動詞以外の終端
形容詞も動詞と同じように文を終端させる事が出来ます。
- 彼女は大勢の聴衆の前でピアノを弾くのが
上手い - She is good at playing the piano in front of a large audience.
この例を短い単位から徐々に伸ばしてみます。
- She is good
彼女は良い(上手い) - She is good at playing the piano
彼女はピアノを弾くのが上手い - She is good at playing the piano in front of a large audience
彼女は大勢の聴衆の前でピアノを弾くのが上手い
日本語は英語と異なり文が明確に終端していることが分かります。
名詞は文を終端する機能を持ちません。そのため「です」「である」「だ」などの終端詞が必要となります。 「体言止め」用法もありますが、「-止め」という名の通り、無理やり止めている形です。
- 私はこの大学で言語学を勉強している学生
です - I am a student studying linguistics in this university.
この例を短い単位から徐々に伸ばしてみます。
- I am a student
私は学生です - I am a student studying linguistics
私は言語学を勉強している学生です - I am a student studying linguistics in this university
私はこの大学で言語学を勉強している学生です
日本語は英語と異なり文が明確に終端していることが分かります。
文の接続と文の終端性。「から」と「だから」
2つの文S1とS2を接続します。
S1 ∴ S2 ( S1 ゆえに S2 )
ここでは接続子∴として、「から」「so」を用います。
日英文セット
- 僕は昨日の朝運動のため犬と一緒に公園へ
走った - I ran to the park with my dog yesterday morning to get some exercise.
- 今日は足が痛い
- My legs hurt today.
- 僕は昨日の朝運動のため犬と一緒に公園へ
走った から 今日は足が痛い - I ran to the park with my dog yesterday morning to get some exercise
so my legs hurt today.
接続詞soは前文の終端も意味しますので"exercise so" のような連結も許容されますが、カンマまたはピリオドを使って前文の終端を明示するのが標準です。
- I ran to the park with my dog yesterday morning to get some exercise
, so my legs hurt today. - I ran to the park with my dog yesterday morning to get some exercise
. So My legs hurt today.
形容詞を使った日英文セット
- 彼女は大勢の聴衆の前でピアノを弾くのが
上手い - She is good at playing the piano in front of a large audience.
と
- 演奏会では誰もが感動する
- Everyone is moved at her concert.
で先の文を原因として次の文があるという連結文を作成します。
- 彼女は大勢の聴衆の前でピアノを弾くのが
上手い から 演奏会では誰もが感動する。 -
She is good at playing the piano in front of a large audience
so everyone is moved at her concert.
名詞(+終端詞)を使った日英文セット
-
ここは春に咲く桜で有名な公園
だ - This is a park famous for its cherry blossoms blooming in spring.
と
- この公園には多くの人が訪れます。
- Many people visit here.
で先の文を原因として次の文があるという連結文を作成します。
-
ここは春に咲く桜で有名な公園
だ から 多くの人が訪れます。 - This is a park famous for its cherry blossoms blooming in spring so many people visit here.
「だから」という表層は前の文の終わり「だ」の後ろに次の文の始まり「から」が付いたものであることが分かります。
文の完全性と述部終端性
日本文の基本は「主語 は 述語」で述語は終端する形が基本です。
完全でない文(基本形でない文)
「雨」
「雨だ」(終端詞)
「今日は雨」
「暑い」(形容詞終端)
「行く」(動詞終止形)
も使われます。「今日は雨」は主語を持ちますが、「体言止め」と呼ばれる終端性を持たない非完全文です。
これらを「から」で繋いだ連接文にできるか見てみると
となります。「から」が要求するのが終端であることが分かります。
なお、英語でもbe動詞や前置詞など後続部品が必須の場所では終端不能です。
体言連結と「です」「ます」;語彙と文法機能の分離
動詞終止形、形容詞は自己終端性を持ちますが、体言を修飾する機能も持ちます。
- 走る人
- 赤いリンゴ
これは語彙が構文終端機能を内在している事により、構文構造の堅牢性を弱める性質と言えます。
日本語は「は」や「が」「の」などにより構文構造機能を語彙から分離しています。しかしながら終端機能は語彙に内在させた形となっています。
終端機能だけを持つマーカーとして「です」「ます」があります。
動詞は連用形を用いて「ます」で終端させることができます。
| 「彼女は走る」 | 動詞による終端 |
| 「彼女は走ります」 | 終端詞による終端 |
形容詞では「です」「ます」のような終端詞に繋ぐ方法はごく近年に至るまで用意されていませんでした。
ごく最近(※)の進化により「です」が直接形容詞に付けられるようになりました。
| 「リンゴは赤い」 | 形容詞による終端 |
| 「リンゴは赤いです」 | 終端詞による終端 |
「です・ます体」は丁寧化の目的より、終端機能を動詞/形容詞の語彙から分離し、論理構造を明示する意味が強いと考えられます。
箇条書き部は構文外要素で端が示されますので体言止めとし、地の文は「です・ます」体とする形式が多いのは論理構造の堅牢性を求めた結果によるものです。※※
※:古くは明治期に存在していたのですが、一般化したのは最近のようです。
※※:「である」体が好まれないのは堅い感じがするのが主原因ではなく動詞を終端させる時、一旦範囲を限定し体言化する「の」を用いた上で「である」をさらに付加する方法だからです。
参考
動詞の活用形
| 活用形 | 説明 | 例(「走る」) |
|---|---|---|
| 未然形 | 動作がまだ実現していない状態を表す形。打消・意志などの助動詞が接続する形。 | 走ら(ない・う) |
| 連用形 | 動作が続く関係を示す形。助動詞や助詞に接続し、文をつなぐ形。 | 走り(ます・て・ながら) |
| 終止形 | 文を言い切るときに用いる形。述語として文末で完結する形。 | 走る |
| 連体形 | 名詞を修飾する形。体言に続いて内容を限定する形。 | 走る(人) |
| 已然形 | すでに成立した事柄や確定条件を示す形。「ば」などが接続する形。 | 走れ(ば) |
| 命令形 | 相手に動作を行うよう指示する形。 | 走れ |
形容詞の活用形
| 活用形 | 説明 | 例(「赤い」) |
|---|---|---|
| 未然形 | 動作や状態がまだ実現していない形。推量・意志などの助動詞が接続する形。 | 赤かろ(う) |
| 連用形 | 状態の連続や変化を示す形。助動詞や助詞に接続し、文をつなぐ形。 | 赤く(なる・て) |
| 終止形 | 文を言い切るときに用いる形。述語として文末で完結する形。 | 赤い |
| 連体形 | 名詞を修飾する形。体言に続いて内容を限定する形。 | 赤い(花) |
| 已然形 | すでに成立した状態や確定条件を示す形。「ば」などが接続する形。 | 赤け(れば) |
| 命令形 | 状態の成立を強く求める形。 | 赤かれ |
名詞/形容名詞に付加する助詞(役割マーカー)の活用形
| 活用形 | 説明 | 例(「静か」) |
|---|---|---|
| 終止形 | 文を言い切るときの役割を付加する形。終端を明示する形。 | 静かだ |
| 連体形 | 名詞を修飾する役割を付加する形。体言に続いて内容を限定する形。 | 静かな(場所) |
| 連用形 | 他の語に接続する役割を付加する形。状態の連続や変化を示す形。 | 静かに(なる) |
| 已然形 | 確定した条件を示す役割を付加する形。「ば」などに接続する形。 | 静かなら(ば) |
| 連用形(別形) | 接続を表す別の連用形。並列・理由などを示す形。 | 静かで |
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