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◆「光子」の根拠に「遠くの星」を出すのは不適切

 計算の愚かな前提

目で星を見るということは、瞳孔を通った光が目のレンズを通し網膜上に星の像を結び、それを視細胞のロドプシンの変化で検出し、脳に送られ認識することです。

この時、光は瞳孔のサイズから小さな点にまで凝縮されます。当然エネルギー密度が増します。このエネルギー密度がどの程度になるか計算可能なはずです。
「遠くの星は見えないはず」という論理の根拠となる計算は殆ど見ることがありませんが、一度見つけたものが、「瞳孔を通った光が網膜全体に広がる」として網膜上でのエネルギー密度を計算するものでした。
いくら何でも馬鹿げたモデルで、酷いと思ったのですが、どこで見つけたのか覚えておらず、さすがにアホくさすぎるので何か読み違いだったのかなとも思っていました。

が、
「遠くの星は見えないはず」の数値根拠をchatGPTに求めた所、シリウスを例とし、式として

瞳孔から網膜に至る光が均等に分布すると仮定

を行って、「遠くの星は見えない可能性が高い」という数値を導き出していました。

それに対し

「瞳孔から網膜に至る光が均等に分布する」という仮定は馬鹿げています。光は網膜上に像として集約されます。これを踏まえて再計算してください

と要求すると、今度は

この結果は、シリウスのような明るい星が非常に遠くにあっても視覚的に検出できる理由を示しています。

結論が変わりました。

ところが、光子モデルとの差を数値で示させようとするとまた「瞳孔から網膜に至る光が均等に分布すると仮定」に戻ってしまいました。

chatGPTは論理を組み立てている訳ではなく、こちらの示したことと、ネット上の「常識」を繋ぎ合わせてそれらしい解答をするだけです。
おそらく「瞳孔から網膜に至る光が均等に分布すると仮定」とする普通に考えておバカ極まりない手法は「光子論者」の基本中の基本の常識なのでしょう。
「目で光学的に光が強められる効果はどの程度でしょう」と質問をすると「4~5倍です」という解答が戻る場合があります。 これも以前出会ってその馬鹿馬鹿しさに呆れたものですが、どうやら瞳孔が2mm~5mm程度に変わるという所のみを捉えて、レンズによる結像が完璧に無視されたもののようです。

 光子の根拠の基本のおさらい

光子の根拠は次のような場面で見られます。

エネルギー密度を徐々に下げて、電子を弾き飛ばす閾値より下がった場合でも、広がった空間内のどこかで反応が起きます。
これは、光が粒子であり、密度が下がったとしても1個の光子が1個の電子を弾き飛ばすという現象を起こしているのです。

レンズによるエネルギーの再密度化があるとどうなるでしょう?

目で見るとはレンズによる集光を行うことで、光子の説明モデルとは異なる状況を持ち込むものです。

 chatGPTによる結論

レンズによる集光に関する計算をchatGPTにさせた後「"光子でなければ遠くの星が見えない"という説明は適切ではないのではないか」と問うと次の解答が得られました。

目で星を見る場合、特に遠くの星からの微弱な光を捉える際には、目の集光機構(レンズによる焦点合わせ)が非常に重要な役割を果たしています。この集光機能によって、微弱な星の光が網膜上のごく小さな範囲に集中し、その結果、エネルギー密度が高まり、ロドプシンが反応するための得寝る閾値を超えることが可能になります。

この状況では、光が光子として離散的にふるまうかどうかよりも、集光によってエネルギー密度が高まることが視覚成立の鍵となります。したがって、「目で星を見る」ことは、光が光子として振る舞うことを説明するための適切な例とは言えません。

むしろ、光子モデルが強調されるべきシナリオは、集光機構がない、または非常に弱い光が広い面積に分布する場合です。

ですので、目で星を見る例は、光子の概念を強調するよりも、目の集光機能の重要性を強調する方が適切かもしれません。

とはいえ、「見る」とはということをしつこく攻めた上での結論で、しばらくするとすぐに常識「光子でなければ遠くの星は見えない」と戻ってしまいます。
まあ、chatGPTは何かを理解して解答するわけではないですからね。

chatGPTの良さは、矛盾点を細かくしつこく追及しても「怒らない」ことですね。

 最も暗い星のエネルギー密度(chatGPTに聞く)

人が目で見ることのできる最も暗い星は6等星です。このエネルギー密度をchatGPTに尋ねてみました。

質問>6等星は網膜上ではどのくらいのサイズになりますか

chatGPT>6等星のような遠方の点光源は、網膜上では約 2.28マイクロメートル (μm) の直径を持つエアリーディスクとして現れます。このサイズは非常に小さく、目の錐体細胞や桿体細胞が感知できる範囲内です

質問>エネルギー密度はどの程度になりますか?ロドプシンが反応するレベルですか?

chatGPT>計算した網膜上のエネルギー密度 1.73×10-2W/m2は、6等星から来る非常に微弱な光でも、目が集光し網膜上のロドプシンが反応することで、星を見ることが可能であることを示しています。

実際には若干矛盾した解答となっていますので、その部分も書くと、 

ロドプシンは、非常に少ない光子でも反応することができ、約1つの光子(エネルギー約 3.6×10-10J)に対して反応を示します。

計算した網膜上のエネルギー密度 1.73×10-2W/m2は、面積と時間にわたるエネルギー量ですが、これが小さな領域に集まり、ロドプシン分子が反応するためには、数個の光子が存在すれば十分です。

となっており、1個で反応するといいながら数個必要だと、即ち蓄積の必要がある、つまり離散エネルギーとしての反応ではないということになります。

この矛盾について問うと次の解答を得ました。

ロドプシン1個の反応が視細胞内で電気信号を引き起こすことは可能ですが、それが単体で視覚として脳に認識されることは非常に稀です。視覚としての認識には、通常、複数のロドプシン分子の反応が必要です。

つまり「光子論者」がいう「目は1個の光子でも認識できる」も「間違い」なのです。
それは即ち「連続エネルギーモデルでは一定以下にエネルギー密度が下がると見えなくなるが、光子モデルでは弱くなっても見ることができる」というのがウソだということです。

 さらに細かく調べた結論

このように細かく調べると最終的に次の結論が返ってきました。

近くの星が見えるのも、遠くの星が見えるのも、目のレンズによる集光でエネルギー密度が増加することによって、網膜上に結像されるため、どちらもエネルギー密度モデルで説明が可能です。

遠くの星が見えることが、特に光子の存在を証明する根拠にはならず、エネルギー密度の増加によって視覚的に認識できることが説明されます。

 単純計算による近くの星(太陽、月)の例

集光機構、視細胞が反応するエネルギー密度を考慮すると「遠くの星」が見えることに疑問はありません。
しかし、太陽、月となると、明るすぎるかも知れません。例えば、光子を想定すると、ある程度以上は密度が上がっても受け止めるサイズが受け損なう可能性があるといったことはあるかもしれません。

近くの星、太陽と月の像を結ばない状態でのエネルギー密度は次のものです。

  • 太陽から受けるエネルギー
    地球において、太陽定数として知られる太陽からの輻射エネルギーは、地球大気の外で約 1361 W/m² です。地球の大気や地球表面での角度により、この値は異なりますが、直射日光を受ける地点ではおおよそ 1000 W/m² です。
  • 月から受けるエネルギー
    月から受けるエネルギーは、太陽からのエネルギーに比べて非常に少ないです。月の満月から受けるエネルギーは、約 0.001 W/m² です。

目のレンズ機構による光の増強は

  • エアリーディスクの直径は約 4.56 µm 。(瞳径5mmとして)即ち光の増強率は1.2×106

瞳径 2 mm の場合、エネルギー密度の増幅率は約 18,528 倍。 瞳径 5 mm の場合、エネルギー密度の増幅率は約 1,202,305 倍。 瞳径 9 mm の場合、エネルギー密度の増幅率は約 7,573,529 倍。

視細胞のエネルギー密度に対する反応は次のようになります。

  • 暗い環境: 光エネルギー密度が非常に低いとき、例えば0.1μW/m²のとき、発火周波数は約1〜5Hz程度です。 発火周波数に関しては次記事◆視細胞とロドプシンと光子を参照のこと
  • 明るい環境: 光エネルギー密度が高く、1mW/m²を超える場合、発火周波数は50〜100Hzに達することがあります。

 太陽を裸眼で見る

太陽を裸眼でみると
仮に瞳孔が2mmまで縮んでいるとして、単純計算では

  • 結像しない状態でのエネルギー密度は1×103 W/m²
  • 目のレンズによる集光後は2×107 W/m²
  • これに対し必要なエネルギー密度は1.73×10-2W/m²
  • 必要エネルギーに比べ得られるエネルギは約1×109
という、とんでもない値になります。

実際には瞳孔調整以外にも多くの値抑圧機能が入り、悪影響が残るとはいえ肉眼でとらえることはできます。
さすがに目を細める程度では難しい。

 月を裸眼で見る(何か仕組みをいれないとまぶしい)

月に関して考えると、仮に瞳孔が2mmまで縮んでいるとして

  • 結像しない状態でのエネルギー密度は1mW/m²
  • 目のレンズ機構を考えると1.8W/m²
  • これに対し必要なエネルギー密度は1.73×10-2W/m²
  • 必要エネルギーに比べ得られるエネルギは約1×102
月でも瞳孔による制限だけでは少し無理がありそうです。

 どのくらい離れても太陽は見えるか?

どのくらい離れても太陽は見えるか? 仮に瞳孔が9mmまで広がったとして、単純計算では

  • 結像しない状態でのエネルギー密度は1×103 W/m²
  • 目のレンズによる集光後は2×1010 W/m²
  • これに対し必要なエネルギー密度は1.73×10-2W/m²
  • 必要エネルギーに比べ得られるエネルギは約1×1012
  • 最低のエネルギーレベルにするには距離を約1×106倍にする必要がある
  • 太陽からの距離(天文単位)×106は1.5光年
となります。

 どのくらい離れても月は見えるか?

どのくらい離れても月は見えるか? 仮に瞳孔が9mmまで広がったとして、単純計算では

  • 結像しない状態でのエネルギー密度は1×10-3 W/m²
  • 目のレンズによる集光後は4×103 W/m²
  • これに対し必要なエネルギー密度は1.73×10-2W/m²
  • 必要エネルギーに比べ得られるエネルギは約4×105
  • 105の平方根は100×3.16(3.16は10 ◆人ならば密典拾う御殿踏む(ムフ)参照)
  • 最低のエネルギーレベルにするには距離を約6×103倍にする必要がある
  • 3.84×105kmを6×103倍すると3.84×108kmであり、2.57AU(天文単位)となります。
  • 即ち太陽の距離の2.5倍の位置がギリギリ見える地点です。
  • 惑星の軌道に置くとすれば3.57AU(天文単位)で、小惑星帯の外側から木星の軌道辺りに該当します。
ということで、地球の月は木星の衛星にすると、(仮に現在太陽から受けている光と同等なレベルの光を受けていても)地球からはほぼ見えなくなります。

 chatGPTは計算が苦手か?

実は前項の計算は当初chatGPTで行ったのですが、変な値になるので、手作業で計算をやり直しました。

chatGPTは例えば次のような間違いを起こしました。

\(\sqrt{10^{5}} = 10^{5/2} = 10^{2.5} = 10 \times \sqrt{10}\ = 10 \times 3.162 = 31.62\)

これは明らかに間違っており、正解は次のものです。

\(\sqrt{10^{5}} = 10^{5/2} = 10^{2.5} = 100 \times \sqrt{10}\ = 100 \times 3.162 = 316.2\)

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