◆特殊相対論に於ける加速と距離と速度のパラドクス
以前の記事 「◆長さは縮む、では距離は?相対論Q&Q」 で述べたように、加速があると、遠くの空間は簡単に光速を超えてしまいます。
例えば、下の図でA地点にいる観測者が1秒かけて加速した結果、距離が半分になる速度になったとします。
その時、120万キロメートル先にあるEは1秒間で約60万キロメートル距離を縮めることになります。(Aは少しだけ移動します)
E地点はA地点にいた観測者に対し、光速の約2倍の速度で移動したことにならないでしょうか?(A地点にいた観測者も移動しますので正確には2倍ではありません)
E地点が光速を超えて移動したとすると、Eの固有時間は負の虚数にならないでしょうか?<
特殊相対論でなぜか無視される「パラドクス」
特殊相対論で有名なパラドクスといえば「双子のパラドクス」ですが、特にパラドクス性は有りません。 折り返しにより兄弟の時空が異なるからです。
双子のパラドクスに関して考察する時に無視することのできない折り返しの加速時の距離の縮みと速度のに関連こそパラドクスがあるのです。
特殊相対論では加速に関して述べられることはありませんが、相対速度、空間や時間の縮みなど加速無しでは状況が起こりえません。
等速運動であれば「縮む」ことはありません。加速があるからこそ「縮む」のです。
加速時の相対速度は特殊相対論的にはどう捉えられるべきか?
加速中であることは無視して、各時点で加速が止まったとして把握するんですかねえ。。。
そうでなければ、遠くの空間程、観測者の加速を超えた加速が起こる。
加速があると、逆方向は空間の縮みにより近づいてくることになり、加速方向とは逆に速度が上がる。
特殊相対論に於いて加速に対して言及されなかったのは「縮む」という言葉が持つ「パラドクス(では速度は?)」が解消できなかったからだと思っています。
加速して距離が縮むとはどういうことか
距離が縮むのではなく同時性が変わるのだと考えています。
移動している空間の距離は同時性を無視しては成り立ちません。
参考:
◆光はなぜ潰れない;今更きけない相対論Q&Q
◆加速とローレンツ変換:縮んでない状態から縮むか
◆空間に関するローレンツ変換は同時刻補正に過ぎない
特殊相対論に於いて「加速」を考えることは正しいことか
基本的に「特殊」相対論はあくまで位置の時間一階微分までしか取り扱わない「特殊」なものです。
座標の2点間の長さに関しては時間一階微分さえ取り扱いません。
「縮む」という言葉が使われますが、「縮む」こと自体は示されず「縮んだ状態」にある事が示されるだけで、「縮む」即ち長さの変化に関しては取り扱いません。
「重さ」という言葉は使われますが、重さを定義する位置の時間二階微分にに関しては述べられません。
もちろん、ある時点での速度、距離などは想定できますから、微小時間経過後の距離,速度を想定することは可能です。
しかし、加速時の距離の変化は遠方程大きくなりますので、2点間の速度は遠方程大きくなります。一定の加速を行っても、元の距離により2点間の加速具合は変わります。
これは加速時の加速そのものの定義、速度の定義をあやふやなものにしてしまいます。
遠くの方が相対速度が大きいとすれば遠くはさらに距離が縮むことになります。光速を超える場合の距離や固有時間の縮みをどう解釈すべきでしょう?
加速をやめた途端に光速を超えた速度が光速以下の速度に落ちるのもひっかかる点です。
加速は近傍以外では空間解釈に混乱をもたらします。空間に歪ができると見做すべきかもしれません。
やはり、特殊相対論の範囲に加速を持ち込むのは少し無理がある気がします。
(一般相対論でも、重力と加速の同等性はあくまで近傍での話です。重力による近傍外空間の歪と加速による近傍外空間の歪は同じものかも知れません。)
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