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◆等速系時空の対称性と遅延の観測

 等速系時空の時間遅延の対称性

特殊相対論に従うと等速運動系にあるA,Bでそれぞれ相手の時間の進みが遅いことになります。

Aを基準にしてBの時間進みが遅いならBを基準とするとAの進みが速くなるのではないでしょうか?

良く上げられる例で宇宙線が地球大気に衝突して作られるミュー粒子はその寿命の短さでは到達できない距離を移動することができ、 これはミュー粒子の移動速度が速いため地上に比べ時間が遅くなるためだとされます。

ここでは地上の時間ταの間にμ粒子ではτμ時間経過したことになります。τμはταより短く、即ちμ粒子の時間は地上の時間より遅くなったことになります。
逆を言えばμ粒子のτμの間の地上ではτα時間が過ぎているので地上の時間はμ粒子の時間より速くなったことになります。

一見対称性が破れているかのような状況が無矛盾であることを説明します。

 基本;光行差と固有時間

以前の記事 ◆光行差と波と粒子と特殊相対論 で光行差を元に特殊相対論での時間短縮効果などを導きました。

等速運動をしている2つの系では光行差が生じます。

ロケットに真横から光が当たっているとします。

静止系から見ると、ロケットの先端と後端に同時に光が到達しています。

一方ロケットの系では光行差により光は斜め前方から来ているように見えますので、ロケットの先端に先に光が到達することになります。
それは進行方向に向かって時計が遅くなっている事を意味します。
後端が9:00であり先端が8:59であるといった形です。
ロケットの系、移動系では静止系より時間の進みが遅くなります。

静止系とロケットの系では「同時性」に差があるのです。

 2つの系の論理の対称性と観測の非対称性

粒子eが地点A-Bを駆け抜ける等速運動系を考えます。

 静止系(A-B系)を基準とした移動系(e系)空間の固有時間

この時A-B系を基準とすると速度Vで動くe系空間はA-B系とは異なる固有時間軸を持ちます。(以下の図では時間を1秒、コンマ1秒という形で簡素化して表示します)

A-B系とe系では時間の差が出ます。

この図では速度vでeがAからBに移動する場合、A-B系で3秒経過しているにも関わらずe系では2.7秒しか経過しません。
移動系(e系)では時間が遅くなっているのです。

 移動系(e系)を基準とした静止系(A-B系)空間の固有時間

A-B系空間とe系空間は対等ですので、e空間を基準に考える事ができます。

この時eを基準としたAの時間経過は次のようになります。

A-B系を基準としてeの時間が遅くなったのと"同じく"eを基準としたAの時間は遅くなっています。

 e系基準ではAとBには最初から固有時間の差がある

μ粒子観測に於けるτμとταの一方的差は何故起こるのでしょう?

e系を基準としたA-B時間経過の図を示します。eがA点を通過するのはB点に達する時点で過去の事象となっています。

eがB点に達した時点でe系では3秒過去の事象となっており、その時点をA-B系で見ると3.3秒前になります。

即ち、e系で3秒で移動したA-B間でA-B系では3.3秒経過していることになります。

重要なのはAとBが別の地点であり、A-B系で観測する時間はA通過がB通過より「過去」に起こっており、その時刻差がA-B系での観測時間となることです。
e系を基準とするとAとBは初めから時刻の差があるのです。

これはAを基準としてe空間のA-B相当の位置移動と見る場合も全く同じです。

2つの等速運動系で互いに相手の固有時間が遅くなるということと実際の観測に於ける非対称性は矛盾なく説明できます。

 双子のパラドクスとμ粒子について

双子のパラドクスは同位置での比較を行うものです。A-BであればAの出発時点とBで折り返してAへの到達時点を比較します。

μ粒子の例はあくまで別地点での計測結果です。
μ粒子の速度vでの固有時間の差により、最初から粒子生成点(A)と計測点(B)には固有時間の差があります。
この速度vの空間ではB地点は最初からA地点より進んだ時間を持つため、A-B間の通り抜けに長い時間を要した、即ちμ粒子の時間の進みが遅くなったと計測されるのです。

μ粒子の生存時間が長く計測されることは双子のパラドクスの説明には全くなりません。
双子のパラドクスはあくまで同一地点に戻る場合の話題です。

 双子のパラドクスと系の折り返し

時々「双子のパラドクスでは折り返しに関して考慮する必要はない」という記述を見かけますが完璧な誤りです。
双方が反対方向に飛び、双方折り返して再び会う時に時間の差がありえないことを考えても折り返しにこそパラドクスの秘密があることは明らかです。
(◆双子のパラドクスのパラドクス;なぜ片方だけ走る参照)

折り返しの系への切り替えには時間がかかります。無限小の時間で切り替えることができるのは質量0、即ち光速移動、即ち固有時間が進まない、即ち粒子の場合寿命なしの場合のみです。

折り返しに関してはA-Bの同時性の問題などもありかなり複雑になります。

系の折り返しに関してはそのうち記事にします。

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