◇うまいことを言うなあ;失敗の隠し方
包み込まれるような安心感
FIT3は恐らく戦闘機かロボットのコックピットを意識したデザインで、運転手を少し囲むような形になっています。
とても圧迫感のあるデザインで、コンパクトカーでありながらまるで軽乗用車のような狭さを感じます。
デザイナーがアニメに登場するようなコックピットをイメージし、この狭っ苦しさを演出したのは明らかです。
僕は閉所恐怖症ではありません。それでも購入直後から、この狭っ苦しさが嫌で嫌でたまりませんでした。
試乗の時には狭さというより空間の歪みに違和感を持ったのですが、慣れるだろうなと楽観視していました。
ピラーの異様な太さによるとんでもない視界の悪さもあり、車から降りると、とても解放感を得ました。
街中での普通の運転でも、交差点で曲がる場合、歩行者の確認などのためには、体を前後させピラーを避けて回りを見る必要があります。
でアニメ狂いデザイナーによるこのとんでもない造形に関し、
「包み込まれるような安心感」がある。
という記述を目にしました。
「狭い」「圧迫感がある」を「包み込まれる」と言い換えるセンスは本当に凄いと思いました。
でも多分敢えてこれを書いたのは本心では「狭いよ!」と感じたからこそなんでしょうねえ。
極細のAピラー
FIT4はFIT3とがらっと変わりインテリアは直線的に作られており、馬鹿げたコックピットデザインは排しています。
デザイン上(実用上)最も大きな違いはピラーです。
FITはフロントガラスが極端に寝た形をしています。

FIT3ではそのガラスを保持するピラーが巨大なものとなっています。
ドアピラーとの間に小さな三角形ののぞき窓がありますが、前後と空間的に繋がった感じをえることができず、周りを認識するためには全く役に立ちません。

しかもピラーの形状がわざわざ視界の邪魔をするように設計されています。

これに対し、FIT4では分厚いAピラーを排除した形となっています。
またピラーの形状そのものも視野を隠す範囲が小さくなるように設計されています。
で、これを「極細のAピラー」で「広々とした視野が得られる」と宣伝しています。

もちろんFIT3のおバカデザインからすればとても大きな進歩ですが、普通の多くの車は、そもそもデザインのためだけにガラスを寝かすための無意味なAピラーを持ちません。

多くのスポーツカーではピラーは立て、ガラスは湾曲させることにより寝かせています。
スポーツカーではないですが、昔のeunos500などもガラス面は寝ているのにピラーは立っておりとても広い視角を持っていました。
本来、とんでもないマイナス点だったものを、他車なみしただけなのですが、そこを「極細Aピラー」などといって売りにするところが、、、うまいなあ、と思いました。
柴犬?これは失敗
FIT3のおおよそ工業製品としては許されないデザインを反省したのかFIT4では外観も大きく変えてきました。
ただ、出来上がったものは、存在感のないデザインでした。
これをどう売るかで考え付いたのが「柴犬のようなかわいさ」
1トンを超えるような巨大な鉄の塊に「かわいさ」を求める消費者はさすがに少なく、FIT4の販売は伸びませんでした。
僕も、代車で運転するまでは、まったくターゲット外(HONDAの想定する客層ではない)と思っていました。
外はまったり、中は質実剛健という車で、FIT3で嫌いだった点、我慢できなかった点が全て解消されていました。
「かわいい」などというアホな売りをしなければもっと売れる車だったのにと思います。
とはいえ、その後、買わない消費者の正しさも実感しました。
この車、FIT3の時に比べ、前への割り込みが、それも少し無理な割り込みが増え、怖いことに左折中に右折車が突っ込んでくることが何度かありました。
他から見て存在感がなく、速度感も曖昧なデザインゆえでしょう。
当初デイライトを消していたのですが、存在を示さないと危険だとして、点けるようにしました。
FIT3のヤクザのほほの傷のようなデザインも安全に一役かっていたのだなと思いました。
余りに攻撃的なオラオラデザインはどうかと思いますが、やはり車は危険なものであり、危険さを目で感じるデザインであるべきです。
「柴犬」イメージの失敗は大きいけど、売れ行き低迷の原因はこの車のデザインの危うさを何となく感じ取っていた消費者の賢さかもしれません。
。。。
イナズママークなどを入れ「オラオラ、どけどけ!」風にするかなあ。。
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