◇象は水が飲みたい;型名でインスタンスを指す
サバンナを群れからはぐれたゾウとキリンが歩いていた。
見慣れない組み合わせを警戒してか、ライオンも遠巻きにすることはあっても襲うことはなかった。
二頭は付かず離れずの距離を保ちながら、かれこれ10時間程歩き続けている。
ゾウは水が飲みたかった。
ゾウは鼻が利く。かすかな水のにおいを感じていた。
型かインスタンスか
日本語では「型」を主体とした文が書けます。
有名な「象は鼻が長い」の「象」は象という型に対して述べる文となっています。
「リンゴが好き」というのも「リンゴ」という型に対して述べる文です。
型で特定のインスタンスを表すことも文学的表現の中ではよく使われます。
冒頭の文では3回「ゾウ」という型名が使用されていますが、その示すものは少しずつ異なっています。
先頭のゾウはゾウという型のインスタンスがたまたまそこにいることを表してます。
数を示さないのは通常1頭であることを表してます。
おそらく英語ではanが付加されるのではないかと推測します。
「が」を使っているのは題材の導入として「命題表現」にするためです。昔々おじいさんとおばあさん「が」いました。
2番目のゾウはそれ以前の文で示された特定のゾウです。
この使い方は若干「文学的」な匂いがするもので、論理学的過ぎる日本語に柔らかさを持ち込みます。
おそらく英語ではtheが付加されるのではないかと推測します。
「は」を使うのは登場している題材に関しての陳述だからです。おじいさんは山に芝刈りに。。。
3番目のゾウはゾウという「型」をしめしています。おそらく英語ではelephantsとなるのではないかと推測します。
このような使い方は決して「曖昧」ではありません。2番目の使い方に微妙さを感じるとしても、文脈的になんら破綻はありません。
もちろん、長い物語の場合、ゾウとキリンにそれぞれ固有名詞を与えて、あとは2番目の使いかたは避け名前を使うことにはなるでしょう。
雑談:英語で型とインスタンス、前置詞、単数、複数
英語では主語(同値主体、属性主体、動作主体など文中に於ける限定的主体)は通常インスタンスである必要があります。
elephantなど型を表す可算名詞が直接主体となることは基本的にはありません。不可算名詞は直接主体となりえます。
が、google先生に「象は鼻が長い」を翻訳してもらったところ
Elephant has a long nose
となりました。これ文法的に正しいんでしょうかね?
ネットで探すと次のような例が出てきます。
An Elephant has a long nose.
Elephants have long noses.
どれかが正しいということではないのかも知れません。
前置詞や単数複数は英語のとても重要なニュアンスを担う部分であり論理で追えるものではなくネイティブでなければ差は分からないかもしれません。(さしあたって、僕には良く分かりません)
何となくAn Elephant has a long noseだとたまたまそこに一匹の象がいて、そいつの鼻が長かったという状況をイメージしてしまうのは、英語を体得していない証拠ですね。
everyやeachなどだと分かるのですが。
「象は牙が2本ある」というのはどうなるでしょう?
google先生は
The elephant has two fangs
と答えました。
Theが付いたのはどう言う「ニュアンス」なんでしょうかね?
ついでに言うと象の牙はfangではなくtuskらしいです。
DeepL翻訳だと
Elephants have two tusks.
となりました。
これだと、全ての象を合わせて2本の牙のように聞こえます。論理が破綻しているように思えます。
weblio翻訳だと、google先生と同じで
The elephant has two tusks
となりTheが付きます。論理の破綻を嫌ったのでしょうか?
excite翻訳では
There are 2 tusks for an elephant.
論理的には正しいけど、普通の英語じゃない形になりました。
「象は牙が2本ある」は英語の論理表現能力を超えていると考えるべきなんですかね。まあ、ニュアンスで分かりますけど。
少し意地悪く「全ての象は牙が2本ある」を翻訳してもらうと
All elephants have two fangs
となりました。
う~ん。every,eachにしたいのは多分英語のニュアンス表現が分かっておらず論理学的に攻めようとしているからですね。
方向がずれました。m(_ _)m。本記事はあくまで日本語に関する記事です。
#ーーーー 2021/10/01 追加
アメリカ在住の友人に訊いたところ次の文が自然だとの事でした。
The elephant's trunk is long.
theは「象」に付くというより「象の鼻」に付くのだと思います。「豚の鼻」「天狗の鼻」などなど色々な「鼻」の中で「象の鼻」。
theが既出の象の個体を指すか、一般的に「象の鼻」を指すかは文脈から読み取ることになります。
なお、have系の文が「象」が主語であるのに対し、この文は「鼻」が主語です。
補足
本記事は、以前の記事
◇命題構文(概念構文)と陳述構文:「が」と「は」
で2つの例文
「象は鼻が長い」
「彼は背が高い」
の差を「鼻」と「背」の抽象度があると書いたとき、主体に「型」と「インスタンス」の差もあることに触れておらず
最近の記事
◇∀象∃鼻 長い : 象は鼻が長い
で「彼は背が高い」は∀、∃を使った表現ができないことが気になったのが書くきっかけです。
タイトルは
「象は鼻が長い」
と
「僕は水が飲みたい」
の合成です。
冒頭の物語はその先はまだ考えていません。
絵は浮かんでいます。ディズニー映画にはなりそうですよね。そういえば昔「3匹荒野を行く」というディズニー映画がありました。
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