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◆量子状態の既決性と観測による量子値の表出

 スピンの観測値と量子状態

スピンはどのような方向で観測してもupかdownの何方かの値をとります。

この事実をそのまま受け取ると、

  • 粒子はスピンに関する半球状の状態を持ち
  • いずれかの方向で観測すると
  • 方向に応じ1または-1の値が表出する
という量子状態モデルが想定されます。

例えば次の図のような量子状態の時、90°方向で観測すると1、60°方向で観測すると1、0°方向で観測すると-1が得られます。

ここでは量子状態は予め決まっているにも関わらず、得られる値は観測方向で変化します。

 1回の観測結果では量子状態は特定できない。

例えば90°の観測で1が得られた場合、どういう量子状態だったのかを特定できるでしょうか?

観測結果で得ることのできるのは量子状態そのものではなく、観測という作用をさせた結果に過ぎず、量子状態の1局面を表すとは言え、全体像を掴むことはできません。

 スピン0の粒子がスピンを持つ2つの粒子に分裂する場合

スピン0の粒子がスピンを持つ2つの粒子に分裂する場合、2つのスピン量子状態は相補的な形になります。
従って2つの粒子のスピンを同一方向で観測すると必ず逆の値が得られます。

 2つの粒子を異なる向きで観測する場合

先の例では2つの粒子を同じ向きで観測しました。

異なる向きで観測すると先の例のような単純な対応関係とはなりません。

ここでは単純化のため30°単位で状況を示していきます。

0°方向で観測し、-1を得たとします。その時あり得る量子状態は次のものとなります。

もう片方の可能な量子状態は次のものとなります。

これは片方観測した結果変化したのではなく、予め配られたカードセットで、片方をめくればもう片方の可能性は決まってしまうのと同じです。


この量子状態を90°方向で観測すると次のようになります。

90°が3個、-90°が3個となり、観測に対して得られる値の確率に差がありません。


150°方向で観測すると次のようになります。

-30°方向が5個、150°方向が1個と観測に対して得られる値に確率的偏りが現れることがわかります。


もちろん、同じ方向0°で観測すると、必ず片方とは逆の値が得られます。

全て0°となります。

 誤解してはならないこと

双方の粒子の量子状態は粒子の分裂時に定まります。

観測するまで定まらないのは観測の方向です。これは観測時の任意項目です。

  • 観測で得られるのはその観測法で表出値であって量子状態そのものではありません。

そして見逃してならないのは

  • 片方を観測しても、もう片方の量子状態は変わらない
ことです。

よく見る誤解を与える説明図に右のようなものがあります。

この図に於いて、観測するまで、値は決まっておらず、観測時にその観測方向でのスピン値が1か-1か定まり、同時にもう片方の 粒子のスピン方向と-1,1が定まると説明されます。

A側で縦で観測したのでB側も縦になり、A側で横で観測すればB側も横になると。

これは完璧な「嘘」であり、A側で縦で観測しても、B側で横で観測すれば横の値が1か-1で得られるのです。そしてそれはA側で観測した結果で変化するものではありません。

よく見る説明では、A側で縦向きに観測しているときはB側も縦向きに観測し、A側の観測方向が横向きに変わるとB側の観測方向も横向きに変わります。
B側はどのようにしてA側の観測方向を知ったのでしょう?B側の観測方向が変わる説明が必要です。


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