◆光行差:「見かけの向き」ではない
世間にはびこる誤解
光行差に関して、
本当の方向との差 ×
という誤解があるようです。
完璧な誤りです。
光行差は異なる系間での「それぞれの本当の方向」どうしの差

春と秋では太陽を廻る軌道での地球の進む方向は逆になります。
この2点で観測する星の向きには差が出ます。 右図のような形です。
この図で誤解してはならないのは、太陽から見る星の方向は、
あくまで太陽にとっての方向に過ぎず、
絶対静止空間での本当の向きなどではないということです。
太陽も銀河内で移動しており、銀河中心に対し光行差を持ちます
A系、B系のでの星の方向はA系、B系での「本当の方向」なのです。
単に光が来る方向ということではなく空間としての本当の方向です。決して「見かけの向き」ではありません。
なお、直接計測するのはA系での方向とB系での方向の差です。太陽との差はその中間と推測できるだけです。
2つの系の相対性

A,Bに絞ってみましょう。
Aを基準にすると、Bが受け取る光の方向はBの進行方向にずれています。
逆にBを基準にすると、Aが受け取る光の方向はAの進行方向にずれています。
どちらが「本当の方向」かというのは無いのです。
それぞれの系でそれぞれが本当の空間の方向であり、光の来る方向なのです。
異なる等速運動系はそれぞれ異なる空間軸を持つのです。
光速とは単なる光の速度ではなく、空間の基準です。
光は高速で移動するものの代表だというだけです。
単に光の方向が違うということでなく、空間そのものが違うのです。
太陽を廻る地球の空間軸はゆがむのか
太陽の周りを回る地球は例えば春と秋では異なる空間軸を持つことになります。
廻るうちに徐々に空間軸が変化します。
これは太陽の重力による空間のゆがみの中を移動し、移動方向が変わるためです。
なぜ誤解が生じるか
光行差に関しての以前の記事 ◆光行差と波と粒子と特殊相対論でも書きましたが、観測者の系を"静止系"、もう片方を"移動系"と 称しました。
一応「系」の差ということを示したつもりではいたのですが、系どうしでの相対性も強調すべきなのかも知れませんね。
一般書で多く見られる「雨」の例えも誤解の元でしょう。
さらに、 学者あるいはそれに準ずる人の記述の中にも「見かけの向き」など誤った表現を見たことがあります。
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2016/02/09
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