◆ケプラーの法則とダークマター:見えてるじゃん
太陽系とケプラーの法則
太陽系では質量はほぼ太陽に集中しています。
右の図は横軸が中心からの距離で縦軸は質量密度となっています。
灰色は太陽の質量が中心部にあることを示しています。
このような系での軌道速度は、右図のようになります。
速度を縦軸に置きました。
この速度はケプラーの法則にそったものとなります。
速度は中心から離れるにつれ下がっていきます。
銀河系の質量分布と計算上の軌道速度
銀河は中心部にバルジと呼ばれる星の集中した部分があり、
その周りに円盤状に星が分布しています。
おおよそ右の図のような感じでしょうか。
このような質量分布の場合の計算上の軌道速度は右図のようになります。
速度は中心からの距離が離れるにつれ一定の値に近づきます。
実際の銀河の円盤部の星の回転速度は中心から離れてもほぼ一定であり、 大体図の通り、計算通りとなっています。
なぜ銀河にケプラーの法則をあてたがるのか?円盤部の質量無視?
不思議でならないのが、なぜ銀河の円盤部の回転を論じる時に「ケプラーの法則」 を持ってくるのかです。
ここまでで述べたように、 ケプラーの法則は太陽系のように質量が中心にあり、周辺の質量が無視できる 場合にのみ成り立つもので、 銀河のように周りに質量が分布している場合には適用できません。
しかもさらに不思議なのが、ケプラーの法則からの ずれが「見えない質量」によっているという意見です。
見えてるじゃん!
まず、ケプラーの法則を忘れましょう
科学の一般書の多くは「ダークマター」の説明を行う場合、 ケプラーの法則を持ち出します。
確かに、
確立されていると信じる「何とかの法則」を持ち出せば、途中の考えや
計算を省略できます。
しかし、それはあくまで「同じ条件」の場合のみです。
太陽系と銀河では見て明らかなように条件が異なります。
最初にケプラーの法則からのズレを述べて、後で「見えている分を考慮しても まだ足りない」という論法は正しくありません。見えている分を計算する時点で 即ち最初のケプラーの法則は全く無用となります。ケプラーの法則を述べる ことにより、判断に要らぬバイアスがかかります。
ケプラーの法則は神の言葉ではありません。銀河の円盤部の動きを論じる場合は 先ず最初にケプラーの法則を頭の中から消し去る必要があります。
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この記事は以前の記事 ◆質量分布モデルと軌道の基礎計算:ダークマター再考 を簡素化し「ケプラーの法則」に絞ったものです。
計算式などはそちらを参照してください。
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