◆質量分布モデルと軌道の基礎計算:ダークマター再考
右のグラフは、質量分布と円軌道速度の関連図です。
横軸が中心からの距離。灰色が質量分布。
青が速度です。
緑は半径内質量、赤は重力、紫は角速度。
こういう質量分布だと周辺部の速度は中心部では直線的に大きくなり周辺部では一定の値に漸近していきます。
ぱっと見では円盤型銀河の物質はこのように分布しています。
そして実際の速度もこの形に近いものとなっています。
右のグラフは、質量が中央部にのみある場合です。
周辺部の速度はケプラーの法則に沿った形で下がります。
銀河の円盤部の星の移動速度からダークマターが必要だと
している説は、このような銀河とはかけ離れた質量分布を
基にしているように見えます。
銀河円盤回転での星の移動速度が外側でも落ちないことは 見えている物質の量 で説明が付くのではないでしょうか
完全球対称質量分布と完全円軌道
密度一定の完全球の球体内の重力
密度が一定の完全球を外部から見る場合、重力は球の中心に全ての質量がある場合と同じになります。
右の図でMは球の質量、mは外部の質点の質量、Rは球の中心からの距離、rは球の半径、Gは重力定数です。
半径Rの球(r=R)の表面の重力は、
- 質量が半径Rの3乗に比例し、
- 重力が半径Rの2乗に反比例する
一定の密度の完全球がある場合、重力は中心からの距離Rに比例することになります。
球の外側はRの2乗に反比例します。
完全球の内部の位置rの点の重力は、
- 外側の質量はぐるりと回って打ち消しあう※
球内部では中心部からの距離に比例した重力が働くことになります。
重力は中心からの距離によって右のようになります。
灰色の部分が球体の質量分布部です。
球体内部は中心からの距離に比例し、球体外部では中心からの距離の
2乗に反比例します。
※外側に分布する質量の影響
外側に完全球体の形で分布分布する質量は内側には影響を与えません。
密度一定の完全球の球体内の完全円軌道速度
球体内を、球の構成要素と衝突することなく、質点が自由に動けるとします。
この状態で重力とつりあって完全円運動をしているとすると、
- 遠心力:角速度の2乗×質点の重さ×半径
- 重力:定数×密度×質点の重さ×半径
- 角速度の2乗=定数×密度
つまり、密度が一定の場合、半径に関わらず角速度一定の回転をすることになります。
線速度は
- 線速度:角速度×半径
角速度が一定の回転というと剛体の回転のように思えるかも知れませんが 全く異なります。
回転は球の中心を通る円上で起こるのであり、右図のような緯度回転をするわけではありません。
密度一定の完全球の球体外部の完全円軌道速度
球体の外側では重力は中心からの距離の2乗に反比例します。
遠心力と重力がつりあっているとします。
遠心力側のRを重力側に移動すると、
「角速度の2乗と半径の3乗が比例する」
というケプラーの法則が得られます。
なお「軌道速度は軌道径球体内の質量の1/2乗に比例し、半径の1/2乗に反比例」します。
ケプラーの法則はあくまで「質量分布の外側では」ということなのです。
銀河のように、質量が広く分布し、その中の星の動きに適用できるものではありません。
力、角速度、線速度と半径Rの関係は右図のようになります。
(各値で単位が異なるため、それぞれ見やすいスケールに調整してあります)
密度が距離の2乗に逆比例する場合
密度が距離の2乗に逆比例すると、円軌道の速度は、半径に関わらず一定になります。
中心から離れるに従って一定の速度に近づきます。
完全球で密度が変わるモデルと銀河のように円盤状に質量の分布が偏るモデルで同じ計算が
できるとはいえません。しかし、ダークマターがなくても銀河の周辺部の星の速度
を説明出来るのではないでしょうか。
少なくともダークマターの必要性を述べるなら、質量分布を無視することはできないことは
明らかです。
右グラフは、周辺の速度が少し落ちるよう、逆2乗の上さらに密度を下げる補正を施したものです。
密度が距離の3乗に逆比例すると、右図のようになります。
冒頭に、指数関数的減少の場合のグラフも置きました。
密度が半径によって異なる完全球対称球体と完全円軌道
先のモデルでは半径Rまで完全に同じ密度であるとしました。
その外に密度の違う層がある場合どうなるでしょう。
右の図は中心核の部分(バルジ相当)は一定の密度で 外側は級に密度が減った場合の円軌道速度分布です。
- 灰色:密度 ρ
- 緑:中心からの球質量 M
- 赤:重力 F
- 紫:角速度 ω
- 青:速度 v
計算は密度の異なる薄い球郭を積み重ねて質量を得、そこから重力、角速度、速度を得ています。
Rが大きくなると密度が低くても体積寄与が大きいので球の質量の増加は大きなものになります。
中心部を狭めてみました。
なんだか銀河のバルジと周辺の円盤のようにも見えます。
計算はあくまで完全球で密度が変わるとしてのものですが、円盤状に質量が分布している場合も同じかもしれません。
指数関数的減少だと次の様になります。右の底は左の底より小さ目です。
指数関数的減少でかつバルジと円盤部に段差をつけると次の様になります。 この段差のある指数関数的減少が銀河の見た目の明るさに最も近いモデルかなとも思います。
中央部にのみ質量がある状態だと右のようになります。
形が分かりやすくなるよう、値毎のスケールは調整してあります。上のグラフとは特に質量のスケールが異なります。
近接星の重力効果
前項までの計算は薄く滑らかに質量が分布しているとして行っています。
実際には質量は空間に比べ小さな「星」に集中しています。円軌道の近くの空間に星が一個あるして、それが中央にある場合
と近くにある場合、遠くにある場合の効果は著しく異なるはずです。
本当はこの項がこの記事の主題のはずでした。基礎計算の前置きが長くなった上、
前置き部だけでダークマターが不要に見えてきたので、近接星の重力効果
については後日別記事にまとめます。
(基本的には本記事での仮の見解「見えてる物質だけで普通に計算できる」を否定した上での記事となる予定)
### う~ん。。。。
本当だろうか?
こんな中学高校レベルの簡単なことが確認されていないとはさすがに思えない。
この記事の計算がおかしいか、円盤状の場合には全くあてはまらないか、バルジ部には
質量があるが円盤部には質量が無い(見えてるけど無質量:ダークマターの逆)か、
そもそも円盤部の速度だけでなくバルジ部からおかしいのか。。。。
あるいは、普通の銀河の写真は円盤部を強調して明るく見せているが、
実は円盤部はとても暗いのだとか。
それはともかく「速度から逆算すれば質量分布はこうなっているはずだが、実際に観測する物質量
はこうなっている」というグラフを世の中で見かけることがないのか、不思議でならない。
太陽系と銀河系では全く条件が異なるのに惑星の運動の「ケプラーの法則」にこだわるのも全く理解できない。
もし、その内実際の質量分布の観測モデルが得られれば、このグラフに重ねます。
### 2020/08/06
球殻が内部に重力作用をもたらさないことの記述を追加
図の並びを少し変更。
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