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◇「種の起源」のすすめ:文庫本だってある!

 久しぶりの「種の起源」

久しぶりにダーウィンの「種の起源」を読み返しました。


本当は前に読んでから「久しぶり」という言葉が適切でないほど時間がたっています。
前に読んだのは小学校の頃で多分4年生だったと思います。
家にあった本で、箱に入った豪華な革?装丁。手で持って読むことができないほど 重かったことを覚えています。
それが、今回は上下2巻のお手軽文庫本での読み返しです。

とんでもなく時間が経由したのですが、不思議なことに、読み返した感覚としては軽い「久しぶりに」 という言葉が適切な感じなのです。

おそらく、直接は読まないにしろ、進化論絡みの話題にはずっと接していましたので、 頭から消えてしまうことはなかったのでしょう。


「種の起源」は基本的にはいわゆる論文ではなく一般人向けの書物です。

進化論の軸自体は「小さな形質変化が自然淘汰により積み重なり種の分化にいたる」という 単純なものです。「種の起源」内では膨大な量の実例を挙げ理論の根拠としています。

読みにくさの理由があるとすると、とにかく、上げている例が多いこと。 本筋がどんどん展開・発展するという形の記述ではないことです。 自然淘汰による進化論の反証となりそうな実例も沢山あげながら、 それらが理論に矛盾するものではないことも延々と述べています。 しかも、少しだけ異なる観点で繰り返し登場する例も沢山あります。

しかしながら、決して難しいものではなく、また既にダーウィンの進化論が 受け入れられた現在であっても、価値を失ってはいません。

 読んでから語れ

勿論「種の起源」を読んでいないからダーウィンの進化論に関して語る資格がないとは言いません。

ただ、無理なく読める書物ではあるので、一応読んだ方がよいと考えています。


最近は人が毛を失ったのも、顔の色が薄いのも、アジア人の顔が少し平なのも、 電信柱が高いのも、郵便ポストが赤いのも、なんでもかんでも「ダーウィンが 示す雌の好みによる性選択」によるものだという論を張る人が多いのが気になります。
全く証拠を示すことをしません。「ダーウィンが言った」というのが根拠だとしている ように見えます。

確かに「種の起源」の中でダーウィンは「性選択」について述べており、 その中で少しだけ「雌の好み」に触れている部分はあります。しかし、 強く主張している訳ではありません。

勿論、最初の提唱者の意見から発展させていくことは重要なことです。
提唱者の著作を直接読むことなく、その解説書のようなものを基に することもありうることです。
しかしながら「雌の好みによる性選択」での進化を述べているものは、 ダーウィンが試みた多くの証拠を示すということもなく、 ダーウィンの「分からないことは分からない」ということを明確にする 姿勢もなく、似非科学レベルから一歩も出ていません。
もし、「種の起源」を読んでいれば、雑な論理展開はしないのではと 思うのです。


最近は聞かなくなりましたが、優生学的なこともダーウィンは言っていませんし、 「生存競争」という表現も広く捉えるべきだとしています。

生存に無関係そうな特質についても述べていますし、本能などについても 章を割いています。
地質学的証拠の不十分さに関しても大きな記述を割いています。


ダーウィンの言っていることを、発展させるにしろ、反論するにしろ、 一応「種の起源」は読んだ上で語るのが望ましいと考えます。

 印象の差

豪華な本(重要なことです)とお手軽文庫本(これはこれで重要です) という「モノ」としての違いの他に、少し印象が違った部分があります。


最初に読んだときは、

  • ダーウィンは宗教的反発を恐れている
と感じました。

「創造論」を否定することにより理不尽な攻撃を受けるのではないか と恐れているように見えたのです。

「まともな科学的批判でない感情的、あるいは宗教的批判」をいかに 避けるかということで言葉を選んでいるようでした。
科学的でない批判に科学的に応戦することはできません。

「宗教って本当に怖いな~」と感じていました。

今回読み返すと、さほどには感じませんでした。


実は幼稚園がカトリックの教会が運営している所で、 生徒に信者になることを強要するといったことは なかったのですが、友達と「進化論」の話をしていると 教諭が凄まじい表情でそれを止めたのです。
いやあ怖かった。神父さんに知れたら火あぶりにされるんじゃないかと思いました。

その経験があったため、どうもそういう目を少し持ちながら 「種の起源」を読んだのかも知れません。



昔読んだものとは翻訳が違い、今回何度も「ナチュラリスト」という言葉 が出てきたのですが、昔の本では出てきた記憶がありません。昔の 本では何と訳されていたのでしょう?

当時(小学校時)と今ではダーウィンの出している例の幾つかは 異なる見地がとられています。
例えば
「浮き袋から肺ができた」というのは最近は逆で「肺呼吸を始めた 魚が海に戻り肺が浮き袋に進化した」とされており、ちょっと ひっかかったりしました。
勿論それで「種の起源」の価値が下がることはありません。


### 2015/11/24
多分子供の頃読んだ訳はこれだというのを見つけました。
訳者は堀伸夫。(この名前何となく記憶にも残っている)
文体も記憶をくすぐられる感じがします。
「ナチュラリスト」は「博物学者」となっています。
(重い革装丁というのは、記憶の混乱かも)



 文庫版「種の起源」のすすめ

遥か以前の記事◆性選択進化説の謎;メスの進化はなぜ無視されたか? に「あやふやな記憶ですが」と書いた時、「これは読んではっきり させる必要があるな」と思いました。

しかしながら、色んな意味で結構「重い」本という印象は持っていましたし、 あんまり本屋で見かけることもないので、ほったらかしになっていました。

多分その時文庫本を見つけていれば読み返していたでしょう。

しかし、記事を書いたのは2007年11月のことで、文庫本が 出たのは2009年9月なのでまだ存在していません。

今回読み返して、大きな記憶違いはないことを確認しました。


こういう本が文庫本になるというのはいい時代になったものです。

心理的壁を低くします。

紙の本の形はとても良いと思います。
多分ネットで読めるようになった 場合、全体をちゃんとは読まず、「性選択」大好き人間は、単語を検索し その部分だけよんで歪んだ考えに自信を持つのではないでしょうか?

繰り返しになりますが「種の起源」は一般向けの本です。
「進化論」について考える場合、読んでおいて良いものだと思います。


ニュートン力学について述べるのに「プリンキピア」を読む必要がある などとは思っていません。僕も読んでいません。
特殊相対論について考える場合。。 アインシュタインの一連の論文 「運動している物体の電気力学について~ 物体の間性はその物体の含むエネルギーに依存するであろうか~ 質量とエネルギーの等価性の初等的証明~ E=Mc^2 現代の重要課題」 に目を通すのは良いかもしれません。「アインシュタイン選書」 といった形でまとめて本になっています。

### 2019/7/15
BLUE BACKSから「プリンピア 自然哲学の数学的原理 第I編 物体の運動」が出ていました。
「第XII章 球形物体の引力」「第XIII章 球形でない物体の引力」はちょっと面白そうに思えたので、微妙なワクワク感をもって購入してしまいました。
まあ、全編を読み込むことはないでしょうけど。

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