◇も
最近目につく、マスコミの見出し文専用文法の否定接続助詞「も」
普通の人が絶対使わないのにマスコミでは良く目にする怪しい日本語表現があります。
- 松井ホームランもチーム敗退
- 運転再開もダイヤ大きく乱れる
この「も」の用法には大きな違和感を感じるのです。これが、
- 松井ホームラン打つもチーム敗退
- 運転再開するもダイヤ大きく乱れる
この用法は昔は見られなかったと思います。
見かけるようになったのこの数年で、それも、若干品位に欠ける 夕刊紙の、しかも、見出しだけでした。
言葉に関しては、どうあるべきかを問うのは難しく、「好き」「嫌い」 を言うしかないかもしれませんが、この用法はひどく「嫌い」でした。
幸い、大手マスコミ、とりわけNHKなどではこんな用法を用いた場面に 出会ったことはありませんでした。
が、
"運転再開もダイヤ大きく乱れる"は
「NHKオンライン」
の見出しに出てきました。
(ニュース記事なので、その後
無くなっています。)
言葉は常に変わり続けるものではありますが、この用法は現在本当に
世間に広く受け入れられるものなのでしょうか?
もちろん、見出しは出来るだけ短くしたいのは分かります。そうは
言っても不自然な文にはすべきではありません。
「も」とは
見出しで「否定接続」に使用された「も」ですが、意味/機能は確かに要素の
- 追加・併記
- 両立を想定しづらいものを
例えば、
- あれ「と」これ「と」
- あれ「も」これ「も」
- 「と」は単純共存
- 「も」は片方だけあれば良いではないか(両立しづらい)
シェークスピアの「ジュリアス・シーザー」の有名なセリフ
- ブルータスお前「も」か
残念ながら原文の「Et tu, Brute!」がそういう意味合いを 含むかどうかは知りません。
「舞台/条件」を現す「で」と組み合わせた「でも」は
- その「条件/舞台」では並立しづらいことを、次に並べる
ただし「AでもB」と「A、でもB」では並立のしづらさが異なり、 「でも」が強調される「A、でもB」の方が並立の難しいことの表現 となります。
「といっても」「であっても」「けれども」なども並立の難しさ が強調されます。
とはいって"も"
「も」は確かに並立の難しさの意味合いを含みますが、単独で 用いる場合、難しさの度合いは強くはありません。
前文で言い逃したこと(言ってみれば想定しづらかったこと ではあります)を追加する形で使うこと'も'あります。
明確な否定接続ではないのです。
始めに挙げた「松井ホームラン"も"チーム敗退」や「運転再開"も"ダイヤ大きく乱れる」 といった明確な否定接続に用いるのは適切ではありません。
見出し文は短くしたいのは理解できます。しかし、「も」の代わりに「,だが」 にしても大して長くはなりません。否定接続による2要素接続 が明確になることも見出し文としては良いことです。
マスコミは「若者言葉」や「コンビニ言葉」を非難する前に自分の 言葉を何とかしてほしいものです。
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