◇'it'は文脈代名詞。It's raining.This is it.の心
文脈上言わなくていい主語は英語だって'意味的には'省略する
人がしゃべる場合、あるいは文章を書く場合、文脈上、あえて 主語や目的語を明示する必要のない場面は 沢山あります。
日本の英語学者あるいはそれに準ずる人の中には「英語は 主語がきちんと明示されており論理的で、それに対し日本語 は主語を省略し曖昧だ」などおバカな事を言う者がいます。
「It is raining」
このitに意味としての主語の役割がどれだけあるというので しょう。
「天候を現すit」などととんでもなく愚かな説明をしている
辞書や参考書があります。
完璧な誤りです。
itは文脈上言う必要のないものの省略です。
日本語は要素に助詞がくっつき文法的(論理的)意味づけを与えます。
従ってある要素を省略したとしても、他の要素の
文法的(論理的)意味合いを保つことができます。
これに対し英語は単語の並び位置で文法的(論理的)意味合いを
あたえます。従って、要素を省略する場合は省略している
ことが分かる必要があります。
itは名詞の省略マークなのです。
「Who is it?」というのも同じです。文脈上言わなくてもよいので
言わないのです。その心は「どちら様しょう?」であって「あなたは誰ですか?」
というような明示的な指定ではないのです。
「天候を表すit」というおバカ説明の辞書や
参考書だと「正体の知れない相手を表すit」とかなるんですかねえ?
「What time is it now?」なら「時刻を表すit」
thatやthisは特定の何かを敢えて指示しているのですが、itは
指示しているのではなくあえてそれに触れていないのです。
「It's beautiful!」も心は(余計なことは言う必要のない 日本語で現すと)「それ、 かっこいい!」ではなく指示代名詞を 持たない「かっこいい!」なのです。
itは「指示代名詞」ではありません。無理やり名づけるとすれば「文脈代名詞」です。
これに対し、thisやthatは「指示」の心をもっていますので、
「Is it true?」->「本当?」
「Is that true?」->「それ、本当?」
といった形に解釈すべきでしょう。
「It is difficult to understand the word 'it'」などの主語itも "it is xx to xx"などという特別な構文というより、後の句で 分かるから省略した省略マークなのです。
目的語も省略し、省略マークitを置く
目的語だって敢えていう必要がない場合省略します。
「I like it.」も心は「いいね」であって「それ、いいね」ではありません。
通常itはあえて"指示する意図"を含まないのです。
文脈のないit。なんとミステリアス!
itは文脈上あえて言わなくてもいいものの省略マークなの ですが、文脈が明らかでない状況で使用すると一体どうなるでしょう?
スティーブン・ホーキンスのホラー小説(映画にもなってます)
に
「it」
というタイトルのものがあります。
このタイトルは本来文脈あってこそ成り立つitを唐突に使うことにより 不気味さを出しています。
マイケル・ジャクソンの
「This is it.」
にも言えることです。
itはthisやthatのような明確な指示ではありません。
この文のThisも何を示しているかは不明ではありますが、
少なくとも具体的な何かを示しています。
しかし、itは文脈上想定されるべき何かではあっても、
文としてそれを指示しているのではありません。
文脈無しのitはこのようにとても不思議な表現となるのです。
日本語の「それ」は単純な指示代名詞でありitとは全く異
なってます。文法機構上省略マークの不要な日本語では
itのような微妙で複雑な単語は得ることができません。
「これこそが'it'なのです」
とは言え
本当は何でもitで省略できればいいのですが、そうもいかない所が
「人間の言葉」です。
人に関するものや、複数を明示せざるを得ない場合、
は単純省略しづらく、theyなどの若干指示性の
高い単語を用います。
itは具体的な意味を持たない単語なので、使い方で逆に「強い指示」の意味を 持たせることも可能ではあります。
英語論?
いえ、あくまで「日本語論」のおっとっと千鳥足です。
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2017/3/9タイトルを
'it'は省略マークです。It's raining.This is it.の心
から
'it'は文脈代名詞。It's raining.This is it.の心
に変更。
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