◇「対等でない」は説明にならない：双子のパラドクス

 「双子のパラドクス」はなぜまじめに取り上げられないか？

例えば大学の相対論の講義で「双子のパラドクス」が本格的に取り上げられる ことがあるでしょうか？
あるいは大学のテキスト、または"まじめな"参考書で「双子のパラドクス」 が本格的に取り上げられるでしょうか？

「素人向けの話題に過ぎない」として避けられているように思えます。

しかし、避けている本当の理由は、「答えられない、良く分からない」 からではないでしょうか？

 「特殊相対論の範囲では答えられない」は理由にならない

確かに特殊相対論の範囲では双子は二度と出会うことはありません。
この意味で特殊相対論の話題として双子のパラドクスを扱うことは 馬鹿げたこととは言えます。

しかしそれはこの問いに関して答えがないということを意味している 訳ではありません。

加速を持ち込み、一般相対論を含んだ検討の中での等速運動に関連 する「双子のパラドクス」の回答ができるはずです。

 「対称でない」だけでは片方の特殊相対論的時間の遅れの理由にはならない

たまに参考書のような形の"まじめな本"で囲み記事的に軽く取り扱われる 場合はあります。

そこでの説明でなされるのが、

双子は片方が加速しているので 対称ではない。加速した側が「一般相対論的時間の遅れ」と 「特殊相対論的時間の遅れ」を持つ×

というものです。

これは余りにも乱暴な話です。
加速に関連する一般相対論的時間の遅れが加速側に起こることは 間違いありません。
しかしそれは特殊相対論的時間の遅れが加速側に現れることには つながりません。

仮に加速した側とそうでない側で「特殊相対論的な差」が あるとすると、

２つ等速運動系は必ずしも同等ではなく、それが どのような「過去」を持つかによって異なる×

ことになります。

これは相対論の根本を否定するものです。

特殊相対論的効果は方向も過去も関係せず双方同等なのです。

 誰もごく当たり前の検討をしないのはなぜか？

少なくともまっとうな回答に出会ったことがありません。

以前の記事 ◆双子のパラドクスのパラドクス;なぜ片方だけ走る でも取り上げましたが、 なぜ対称な仮定、双方が一旦反対方向に飛び去り戻る、 という当たり前の形で考えることができないのでしょうか？
あるいは双方の加速の関与度を計算に入れるという 当たり前の事がなぜできないのでしょうか？

「双子のパラドクス」は特殊相対論が適用できる範囲に関する 本質的な問題を突いています。

ぜひ、まじめに取り上げて欲しいと思います。

◆双子のパラドクスと同等性と観測系に加速こそ無視している ものの、簡単な検証を載せています。

 ミューオン粒子、GPS

「宇宙からやってくるミューオン粒子」の寿命は双子のパラドクスとは無関係です。 双子のパラドクスは一旦離れた２つの粒子が再びほぼ同じ空間、ほぼ相対速度０の 状態を持つ場合の話です。ミューオンは異なる位置での話ですので全く関係ありません。 GPSの時間は動いている衛星より地球の方が一般相対論的効果によって時間が遅れます。 衛星も単に地球に対して等速運動系となっている訳ではありません。