◆長さに関するローレンツ変換式を導く
移動体の同時性と静止系からの計測
2点間の距離を定める場合、当然、同時に2点の位置を定める必要があります。
同時性の確認方として、2点の真ん中から光信号を送り2点それぞれが受け取った
時点を同時と見なすことができます。
光速は一定です。移動する2点(および中点)の同時性、および距離はどのように
計測されるでしょうか?
静止空間で計測する2点の距離(長さ)は、移動空間での同時性を考慮した 「本来の距離(長さ)」より 縮みます。
では、一体どのくらい縮むのか計算してみましょう。
この縮みがローレンツ短縮になっているはずです。
次の図は縦を時間軸、横を空間軸としています。
a-d が 2L 、a-c ,c-d が L です。
a-d の長さのロケット隊は速度 v で移動します。
中央の c から出た光は速度 C で広がり、
静止空間時の t1 で位置 b に於いて、
後尾ロケットに到達し、静止空間時の t2 で位置
e
に於いて先頭ロケットに到達します。
移動体の同時刻を考慮すると b-e がロケット隊の本来の長さであると言えます。(本当かな?)

縮んだ割合を計算してみましょう。
本来の長さ be は ad から ab を引き、 de を足したものです。
まず ab を L と v , C の式で求めます。
ab=v×t1 、 bc=C×t1 、
ac=L
なので
となります。
次に deを L と v , C の式で求めます。
de=v×t2 、 ce=C×t2 、
cd=L
なので
となります。
従って be は
となります。
移動体同時補正を行った長さ be と静止系距離
ad の比は
となります。
「あれっ?これ、ローレンツ変換の2乗じゃん。変だな」(次項に続く)
相対補正(えっ?なんかご都合主義的な)
実は be を 「移動系内で計測する(移動体自身を静止系とする)本来の長さ」と考えるのは間違っています。
be 、 ad は何れもこちらの静止系での計測長です。
be をあちらの移動系で計測したものが「本来の長さ」なのです。
本来の長さを X 移動系と静止系(あちらとこちら)で計測される長さの比を
γ
とすると
X = be/γ
Xγ=be
be=Xγ
となります。
また静止系で同時計測した長さ ad は
ad=X/γ
となります。
従って、
即ち、求めたい比 γ は
となります。
おお、ローレンツ変換が出た!でも微妙に納得しづらいような。予め「立場による変化」を 式に仕組むのはなんかずるい。結果に向かって辻妻合わせをしたようにも 見える。とは言え、一応値は求められました。
だからと言って、それは縮んだことになるのか?
確かに、計算上は縮んだ状態にあります。
でも、それは本当に
- 移動を開始することによって
- 縮んでいない状態(X)から縮んだ状態(X/γ)に移行した
実は2点が同時加速すると、加速により同時性のずれが起こり、2点の
距離は長くなるのです。そしてちょうどその分縮みます。
つまり「伸びるけど伸びない」または「縮むけど縮まない」というのが
実際に起こる事柄なのです。
詳細は次回の「妄想物理学」記事で。
補足:誤解してはいけないこと
ここで見ている同時性はあくまで先頭と後尾のものです。中点から
光が出た時点と、先頭でそれを受けっとった時点は、当然
同時ではありません。
ロケット隊の座標で計測すると、中点から出た光は同時に
先頭と後尾に到達します。この「同時に起こる事象(イベント)」を
捉えているのです。
補足2:誤解してはいけないこと2
光を発する、光が到達するといったイベントの起こる「場所」は、
どちらの空間から見ても同じです。
イベントの発生した場所が異なるのではなく、同じ場所と場所の
距離が、立場によって異なるのです。
補足3:両側から光を出し中央で受けても同じ
両側(通常列車の先頭と後尾)から光を 出して中央で受けるという形での説明もあります。

数式の得かた
数式は次の記述からオフライン処理で作成したMathML-htmlをFirefoxで表示したものを キャプチャしました。
ab = L@{ab%ac} = L@{ab%{bc+ab}} = L@{{v×t1}%{C×t1+v×t1}} = L@{v%{C+v}}; de = L@{de%cd} = L@{de%{ce-de}} = L@{{v×t2}%{C×t2-v×t2}} = L@{v%{C-v}}; be = 2L-ab+de = 2L-L@{v%{C+v}}+L@{v%{C-v}}= L@(2-v%{C+v}+v%{C-v}); =L@(2-{v@(C-v)}%{(C-v)@(C+v)}+{v@(C+v)}%{(C-v)@(C+v)}) =L@(2-{v×C-v^2}%{C^2-v^2}+{v×C+v^2}%{C^2-v^2}); =L@(2+{-(v×C)+v^2+v×C+v^2}%{C^2-v^2}) =L@(2+{2@v^2}%{C^2-v^2}) =2@L@(1+{v^2}%{C^2-v^2}); =2@L@({C^2-v^2}%{C^2-v^2}+{v^2}%{C^2-v^2}) =2@L@{{C^2}%{C^2-v^2}} =2@L@{1%{1-{v^2}%{C^2}}}; be%ad=be%{2@L}=1%{1-{v^2}%{C^2}}=(1%√{1-{v^2}%{C^2}})^2; be%ad= {γ@X}%(X/γ)=γ^2=(1%√{1-{v^2}%{C^2}})^2; γ=1%√{1-{v^2}%{C^2}}%は分数、@は表示しない掛け算、^は累乗、{...}は範囲です。 範囲は例えば分数の分子がどこからどこまで、分母がどこからどこまで かといったことを指定するのに用います。
これに関する記事を ◆HTML5-MathMLを実用的にする式変換ツールに載せています。
| 固定リンク