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◇被捕食確率と繁殖確率による群れ行動進化モデル

巨大な群れで行動する生物は沢山います。

なぜ群れるかに関して、「群れている方が捕食される確率が低いからだ」 という説明が良くなされますが、変じゃないでしょうか?

群れていようがいまいが、例えば1万匹の中の1匹として狙われれば 1/10000という確率は同じです。

狙われても逃げることのできる可能性があります。群れている場合 近くの仲間が逃げることに成功したとき、新たに自分が狙われる 可能性も出てきます。

単純に考えると、群れている方が捕食者に発見されやすく、 群れで行動することは、被捕食を避けるという点では確率的に不利 であるように見えます。

 被捕食確率モデルで本当に群れ行動は説明できるか?

群れの場合と単独の場合の捕食者との遭遇を考えてみましょう。

重要な点は

  • 群れの中に捕食者はいない
ことです。

定常状態で各個体近辺の一定範囲を捕食者がいない安全域とします。捕食者は この範囲の外にいます。もちろんガードがある訳ではないので捕食者はいつでも この安全域を犯します。

各個体の周りには捕食者がいるかいないか分からない危険域が広がっています。

群れの場合はどうでしょう?

群れでいる場合、各個体の安全域が重なり、各々の個体の周りの危険域は 単体行動の時より狭くなっていることが分かります。

単独の場合周り全てが危険なのに比べ、群れで行動をとる場合、群れの端 であっても空間のほぼ半分は安全で、そちらから捕食者が現れることは ないのです。

群れの空間の中に捕食者がいないことが保障されるためには、 群れの個体間で情報がいきわたる必要があります。
群れの中の1個体が捕食された場合、ただちに他の個体に危険である ことの情報が伝わり、逃避行動を採らなければなりません。

この時、逃避行動を採っても群れが維持されることも重要です。

さて、この様に考えると群れ行動は有利なようにも見えますが、ちゃんとした 形でモデル化し、数値シミュレーションを行ってみる必要があります。

ごく限られた危険水域があり、そこを限られた時間で横断するなどと いった場合は群れ行動が有利であろうとは思いますが、長時間に 渡る捕食圧力の中で有利であるとは考えにくいのです。
結局狙われたら捕食されてしまいます。

では、捕食圧以外に群れ行動をもたらす要因はあるでしょうか?

 群れ行動は繁殖のため

例えば、イワシの群れで、はぐれイワシが出たとしましょう。

はぐれイワシは捕食される率が高まるでしょうか?

群れから外れることにより逆に捕食者に発見されづらくなるのでは ないでしょうか?

では、群れからはぐれたイワシの被る大きなデメリットはなんでしょうか?

それは繁殖に関われなくなることです。

定地性の魚でない場合、群れていないと、配偶者を見つけることは 極めて困難になります。

おそらく群れからはぐれたイワシ(群れる性格に欠けるイワシ)は 子孫を残すことができないでしょう。(なにかの偶然で定地性の イワシとして進化するかもしれませんけど)

群れていることによる被捕食デメリットと群れていることによる 繁殖メリットの関連により群れ行動が進化したのではないかと 考えているのです。

幾つかの要因

  • 群れる性質の強さ
  • 個体の距離による繁殖率
  • 捕食者の密度
などでモデル化しシミュレート可能だと思います。

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本当はシミュレータを作成したかったのですが。。。。

 世の中に蔓延る進化の仕組みに関する大きな誤解

進化というのは実験や予言のできるものではないので、 いいかげんな説がまかり通ってしまうことがあります。

個別の種の進化に関わる説の大きな間違いは

  • 生存優位性のみを重視している
  • 繁殖に関しては「メスの好み」という矮小化した極端な視点しかもたない
の2点にあります。

◇可識別性と生存負荷度による形態進化モデル でも述べたように、生き残るだけでは進化はありません。 雌雄が出会わなければならず、その為には群れる、定住 する、目立つ、近縁種と姿の差を持つなどが必要なのです。 例えそれが少し生存性を弱めるとしてもです。

クジャクの羽根はメスの好みで進化したのではありません。群れを 作らないクジャクにとって離れた距離からでもオスがメスに発見される 必要があるのです。

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2010/5/21 モデルの記述部を単純化して絵を追加

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