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♪「いかんぜよ」:土佐弁アクセント考

多分、この一年くらいの間は「土佐弁もどき」がかなり聞こえてくるんだろう なあ、、と思っています。

ドラマや映画で地方の方言を用いる場合、全国に通じる形にしておく 必要があります。

特に時代劇の場合、当時と今ではかなり違っていることもありえますので、 細かなことを言っても仕方ありません。

と、分かってはいるのですが、、、、やっぱり気になります。

 時制(相)

一番気になるのは土佐弁の核心である時制(相)で これに関しては ◇進行形と完了形;土佐弁考察で述べました。

これは脚本家さえしっかりしていれば良く、俳優に負担をかけるものでは ありません。

とはいえ残念ながら、きちんとしたものを聞くことは殆どありません。

少し見ただけだったのですがNHK大河ドラマ「龍馬伝」 はきちんと出来ていました。広末涼子も出てますしね。

2010/2/16 龍馬伝:「幕府は何をしちょったがよ」(過去完了形)ではなく「幕府は何をしよったがよ」 (過去進行形)が正しい。

2010/2/16 龍馬伝:。。。広末、いいねえ。(本ブログっぽい発言ではないけど)

2010/5/30 龍馬伝:実は最近は殆ど見ていない。チャンネルは合わせては みるのだけど、画面が受け付けられない。 フィルム風を狙って、コントラストを落とし、黒レベルを上げ、色(緑だねえ)を被らせ、 コマ数を落としているんだけど、あまりにも不自然。せめて色フィルタは外してもらわない と、どうしても目に幕がかかったようで気持ち悪い。で、残念ながら、内容に入る前に 目が嫌ってしまう。

 アクセント:いかんぜよ

アクセントはかなり関東の方とは違っていますので、細かく合わせることは 難しいでしょうね。

例えば「高知」なども関東では「こ」が高く、「お」「ち」が下がるのですが 土佐弁では高め平坦になります。

アクセントのパターンは「平坦」「低-高」「高-低」など色々ありますが、 一つだけ土佐弁でまずないパターンは三音以上の単語で「低-高-低」と第2音だけ が高くなるものです。

例えば「いかんぜよ」などテレビでは第2音が高いアクセントにされてしまう ことが多いのですが、前3音が高めの平坦で話すのが正しいのです。

間違ったアクセント

正しいアクセント

平坦なアクセント(本物の土佐弁)の方が柔らかく響きます。

 アクセント:空が青い

第2音だけが高くなることがないのはあくまで3音以上の単語の場合 であり、例えば「空(そら)」という単語は 低-高 のアクセントを もち、「空が」となった場合でも 低-高 は保たれ、低-高-低 という アクセントとなります。

ところが全ての場合を高-低-低..とする変なアクセントを 使う"偽土佐弁"も良く耳にします。
残念ながら龍馬伝もこの傾向があるようです。

例えば「空が青い」は

間違ったアクセント

関東アクセント

正しいアクセント

土佐弁風にしようとしていることは分かるのですが、これなら、そのまま 関東アクセントの方が自然です。

2010/2/16 龍馬伝:例えば、「黒船が来るとは」の「来る」も 正しくは"く"が低く"る"が高いんですけどねえ。

 「つ」の発音

この発音が出来れば土佐弁でなくても土佐人だと感じるのが、

 「つ」の発音

です。

説明するのはちょっと難しいのですが、関東の「つ」よりs成分が 微妙に弱く、u成分は少し強いが関西弁ほど強くはない、という 感じなのです。

TVなどでも「あ!高知出身だ」とすぐ分かることが多いし、 昔ヒマラヤに行ったときに大阪弁に混じって(世界中どこに いっても大阪弁が響き渡っているように思えますが。。) 土佐の「つ」が聞こえて来て、尋ねるとやはり高知の 人でした。

「ひ」もちょっと違うように聞こえますが、もっと説明が 難しい。

昔は「づ」と「ず」の区別もしていたんだけど、最近は差が 無くなってしまいました。僕も殆どこの区別はしません。

 ### ぜよ

土佐弁と言えば「ぜよ」ということになるのですが、実はこの「ぜよ」は 割と強い言葉なので、そうそういつもいつも使う訳では ありません。

決意を表す訳でもなく、他人を引っ張るわけでも ないのに「行くぜよ」などとは言いません。

軽く言う場合は「~から」という意味の「き」を使って 例えば「ほいたら、これで帰りますきに」(それでは これで帰りますから)といった風に言います。 「帰る」 の代わりに「いぬる」とちょっと古い人なら言います。

「ぜよなんて言わない」と言う場合も普通の言い方なら 「ぜよなんて言わんよ~」となります。~は語尾が少し 伸びている感じを示します。

とは言え、強めに言いたい場合「ぜよ」は使います。 若い人は使わないという 誤解もあるようですが、やはり使います。ものごとを 強く言わない人が使わないのです。
昔の時点(僕が子供の頃)での爺さん婆さんでも 柔らかくしゃべる人は「ぜよ」は使いませんでした。
「ぜよ」は品がない言葉という 訳ではありません。少し強めの言葉なのです。

例えば「行くぜ」などというのも、普通の感覚の人は、 そうそういつもいつもは使わないはずです。

 ### 余談:熊(くま)のアクセント

土佐弁とNHK標準語は結構アクセントが逆のことが多いのですが、 「熊」はどちらも 高-低 で一致しています。

いや、一致していました。

最近はなぜか 低-高 を耳にすることが多くなって きました。
アクセント辞典にも両方が書かれるようになってしまいました。

まあ。。。。変わるんでしょうね。。アクセントも。

 ### 完全な余談:時制(現在/過去/未来)と相(進行/完了など)

時制(相)に関連する記事を何本か書いています。

そのたびにどうも不自然に感じるのが、時制と相を 合わせた言葉が無いことです。

もちろん、一般には時制だけで通じるとは思うのですが、 ちょっと躊躇してしまいます。以前の記事で一度「時制」 としたのですが、気になってすぐ「時制(相)」に 修正してしまいました。

本当はテンスが時でアスペクトが制で 合わせて時制とするのが良いというのは別記事でも 述べました。

やはり、時制(相)や「時制と相」と言う書き方は鬱陶しいのでこれからは 大きな誤解を生まない範囲で「時制」で行こうと思っています。

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2017/12/02 音を<audio>に変更:HTML5は本当に頭にくる

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