◆2055年:宇宙ステーション5
骨子
映画「2001年宇宙の旅」に登場した宇宙ステーション5と ディスカバリー号を舞台にした物語です。
「タワーリングインフェルノ」「ポセイドンアドベンチャー」など の脱出パニックムービーの宇宙版といったものです。
以下は物語の骨子に一部物語中での状況説明の会話を追加したものです。
これに色々人間模様を追加し、最終的な
話となります。
宇宙ステーション5とディスカバリー2号
20世紀後半に始まった宇宙開発は21世紀に入り人々の 熱もさめ大きな発展は止まってしまっていた。
建造されて半世紀以上経つ宇宙ステーション5も建造当時の ような月や惑星への中継基地としての役割はほぼなくなり、 細々と滞在そのものが目的の宇宙ホテルとして運用が続け られていた。しかし、既に想定耐用年数を過ぎ改修コストの高さな どから廃棄されることが決定された。 二輪構造の計画だったが片輪だけで建造は中断され、結局 最後まで二輪がそろうことなくその役割を終えることに なった。
同時に廃棄処分の決定した宇宙船がある。
建造から50年目に入る惑星探査船ディスカバリー2号だ。
ディスカバリー2号は、燃料や資材の積み込みも終わり
出発準備を整えた段階でエンジン部のトラブルが発生し、
爆発の危険性も出たため、地球から遠く離れた、
ラグランジェポイント付近に移動させ、そのまま厳重な
管理下に置かれた。
このエンジントラブルに関しては搭載コンピュータHAL9300の
"意図"によるものではないかという噂が流れた。
現在HAL9300は制御系から切り離され、ロジックおよびメモリ
の揮発を防ぐためのリフレッシュ動作のみが定期的に行われ
ている。
ステーション5お別れパーティ
ゆっくり回転するステーション5。
コア部のドックA(青く照明されている)にはシャトルが停泊している。
ドックAの壁5面にはそれぞれコントロール室がありA~Eと名づけられている。
コントロール室から見るドックとシャトル。
反対側にあるドックB(赤く照明されている;本来は侵入禁止を表す
色であったのだが、旅客運用がドックAのみになったため、ドック
は常に赤に照明するようになった)にはシャトルは無いが、
コントロール室では何人かが作業を行っている。
ステーション5最後の客として招かれた数十名と
重役、運行安全管理担当以外の従業員および
取材陣を交えお別れパーティーが、ステーション5
で行われている。
地上でもパーティーが開かれておりステーション5
とTV中継がつながっている。
TVの解説の声。
「宇宙ステーション5は3週間前に通常の
営業を終えました。今日特別に招待した客とともに
パーティーを行い最期の営業を終えます。
ステーション5はその後月に運ばれ月面基地の
資材として利用されます。
内装部品や調度品、多くの電子部品は月回周軌道
上で取り外され月面基地に運ばれほぼそのまま利用
されます。
構造体はその後、月面に墜落させ、金属資源など
として改めて回収することになります。
今後のスケジュールですが、
2日で一般業務員は全て退去し、その後3日かけて
回転を停止します。
回転停止後、半年かけてブースターエンジンの
取り付けと構造補強を行い、1ヶ月で
月周回軌道にまで移動します。」
さらにTVの解説の声。
「実はもう一機、月面基地の資材として使われる宇宙船が
あります。
惑星探査船ディスカバリー2号です。
ディスカバリー号はエンジン部が切り離されます。
エンジン部は危険が大きいため、太陽に突入させる
ことになっています。その他の部分は月面基地で
利用されるのですが、メインコンピューターHAL9300
は地球に下ろされます。
HAL9300は予測不可能性と
自我を持つ可能性のある存在を
人工的に作り出してよいものかという
倫理面の問題で現在では開発が禁止
されている、ホログラフィックロジックによる
学習自発論理生成型の大規模コンピューターで、
知能や自我といった人間研究のために用いられます。
半世紀以上前に作られたものではあるのですが、
ある意味で現在のコンピューターを超えた存在なのです。」
パーティーが始まる。
会場の片隅にはステーション5やディスカバリー、シャトルの模型が ガラスケースに収まり展示されている。
ディスカバリー号
外部エアロックに小さな宇宙船が接続している。
ディスカバリー号:コックピットからポッドベイへと移動する人。
コックピットからHUBを通り回転する居住区へ移動する人。HUBの突き当たりには
HALの目がある。(ここが扉となっており、エンジンまでつづく背骨部
の通路がつながっていることが後で示される)
微小天体群
地上の管制センター:
慌しい動き。
チーフ:「どうだ?」
レーダー係り:「軌道交錯します。約50cm前後の物体が。。。捉えられるもので。。。13個。
秒速60キロ、距離20万キロ、55分で衝突位置にきます。
ほぼ直径1Km程度の中にまとまっています」
チーフ:「ステーション5、ステーション5。直径50cm前後の微小障害が後55分
で軌道交錯する。回避措置を願いたい」
宇宙ステーション5のコントロール室A:
窓の外に、停泊中のシャトルが見えている。
キャプテン:「物体を確認した。回避措置をとる。」
モニタに衝突回避のシミュレーションが表示される。
キャプテン:「軌道を10キロ下げ、周回角速度を上げる」
管制センター:「了解。こちらのシミュレーションでも
衝突回避ルートを確認した。危険回避行動レベル
は通常レベル2と認定された」
ステーションのパーティー会場(メインフロア):
演説を終えた最上級幹部に秘書が駆け寄り耳打ちする。
アナウンス:「当ステーションはこれより軌道変更のための 加速を行います。少し体に傾きを感じますので、近くの何か におつかまりください。なお、これは通常範囲の作業で 特に危険を伴うものではありません」
幹部が客に安心してよいということを繰り返し、アナウンス がもう一度ながれ、やわらかい注意音がなる。
ステーション5外観
コア部、スポーク、輪の複数箇所に付けられた姿勢制御用 ロケットモータがやわらかく噴射を始める。
メインフロア
何事も無いかのごとくパーティーが続いている。
何人かが係りの人間の案内でステーション内の見学 をするためエレベーターに乗る。
微小天体の衝突、軌道制御ロケット誤動作、墜落へ
軌道を変えたことにより、微小天体群の中心は、ステーション5から
約20Km先を通過する。
地上から流星群が見られた。
管制センターの声:「微小障害群、ステーション5の20Km近傍 を無事通過」
その直後、ステーションのコア部の外壁に小さな物体が衝突し、
ごく小さな穴が開く。
コントロール室に甲高い金属音が響く。
コントロール室A:
警報がなり、ランプが点滅する
「こちらステーション5。何かが衝突した。繰り返す。何かが
衝突した」
少しして衝突部の外壁が一部がはじけ跳ぶ。
突然ステーション内の照明が落ちる。
メインフロアの照明も落ちる。客の驚く声
エレベーターは停止する。
緊急照明が点く。
コントロール室A:「電源ダウン、補助電源に切り替えます」
数秒で、通常の照明が点く。
メインフロアも通常の照明が点き客はほっとする。
突然、姿勢制御ロケットが激しい噴射を始める。
ステーション全体に響く軋み音と警報音。
メインフロアにいた人間は投げ飛ばされる。
コントロール室でも人が投げ飛ばされる。
エレベーターも激しく揺れる。
各所に破損が発生する。
ドックに止めてあったシャトルがずれコントロール
室Aのガラスを突き破る。
エレベータ、客室はさらに激しく揺れる。
制御ロケットの激しい噴射は止まらない。
ステーション5の惨状
地上管制センター:「ステーション5!応答してください。
ステーション5!応答してください」
ステーション5ドックコントロール室A:破壊されている。
ステーション5内メインフロア:激しい振動、警報音、きしむ音。壁にしがみつく客。
簡易の気密服が壁から飛び出てくる。気密服に入るよう客に指示する係員。
気密服は船外活動などはできないが、二酸化炭素除去機能を持ち付属の
小型ボンベの酸素で1時間程度の呼吸ができるようになっている。
通常は各所に用意された酸素供給口に服の脇にある強化ホースをつないで酸素
を確保する。同時にボンベにも酸素が蓄えられる。
ステーション5エレベータ内:激しい揺れ。客は椅子に安全ベルトで結ばれている。 一人のベルトが外れ、天井に打ち付けられる。
ステーション5コントロール室D:「こちらステーション5。コントロールデルタ。
姿勢制御ロケットが暴走しています。
コントロールアルファとは連絡がつきません。ブラボーからエコーは機能しています。
フォックストロット、ジュリエットも無事です。
人員モニター、103名分確認。
ただし、現在振動が激しいため、生存確認は不能。コントロールデルタでは4名全員
生存しています。
エレベータAに10名が閉じ込められています。
客室気圧低下。気密完全破損は無い様子。
回転速度は標準、客室レベルで0.7G。
姿勢制御ロケットは、軌道を下げる形で最大噴射を続けています。止めることが
できません。燃料遮断不能。高度がどんどんと下がっています」
ステーション5。スポーク(エレベータシャフト)の一本が大きく破損する。激しく揺れるエレベータ室内。
姿勢制御ロケットの噴射が突然止まる。
音が静かになったメインフロア。少しほっとしながらもきょろきょろと回りを見回す客。
エレベータ内。低重力状態でゆっくりと床に下りる客や荷物。
声:「姿勢制御ロケット。燃料枯渇」
メインフロア:ガラスのきしむ音。窓に目をやる客。ガラスに走るひび。
突然窓が吹き飛ぶ。巻き起こる風に飛ばされそうになる客たち。
一人が窓から吸い出される。
ま、映画ですので。。。
窓のシャッターが直ぐにおり、空気の漏れは止まる。
脱出開始
この時点でステーション5には次の人間がいた。
・ドック内コントロール室A~E:衛星クルー12名生存。6名死亡
・ドック内コントロール室F~J:衛星クルー3名
・エレベータA:客8名、ホテル従業員1名、衛星クルー1名
・リングAメインフロア:客42名(内35名はパーティ会場・7名は個室)、ホテル従業員20名、
衛星クルー14名、死亡18名
メインフロアには緊急脱出ブロックが設置されている。 これは通信システムと気密服への酸素供給系を備えた 小さな部屋のようなもので、ステーションから離脱できる ようになっている。ただし、エンジンを持たず、離脱後は 救出ロケットにより回収されるのを待つだけとなる。 低軌道での離脱は考慮されていない。 定員は20名。20機あり400名の脱出が可能であるが、 通常営業を終えたあと、暴発防止のため15機は完全封鎖 され、使用できるのは5機のみ。
客、ホテル従業員は4つグループに分けられ、それぞれクルー
が脱出ブロックへ案内する。
最も遠いブロックはパーティー会場から丁度輪の反対側にあった。
船内の損傷も激しく、移動は困難を伴った。
脱出ブロックのうち2機は無事離脱した。
だが、一機の脱出ブロックが全く離脱できず、一機が離脱しかかった 状態で引っかかってしまった。
救出計画
退去用のシャトルが1機地上の発射台に待機していた。
月移動用のブースターロケットも既に軌道に上がっていた。
これらを使い救出計画が練られる。
まず、ブースターロケットを輪に連結し、回転を止める。
エレベータAに閉じ込められた人たちはシャフトを上がり
シャトルで脱出する。状況によってはその他の客もドックまで
誘導しシャトルで脱出する。
シャトルはカタパルトから外れてしまっていたが、カタパルトに戻せば
脱出用に使えると判断された。
地上から救助隊が地上待機中のシャトルで救助に向かう。救助シャトルは
ステーションの輪の近くによる。
非常用エアロックから救助隊が入り、
脱出ブロックを離脱させる。
個室に残されていると思われる客は個別に救出する。
輪の回転をかすめるように、ブースターロケットが近づき、 接続を試みる。
ディスカバリー号で落下を防ぐ計画
救出活動は始まったが、大きな問題があった。
ステーション5が地球に落下することの影響である。
計算ではヨーロッパ南部から東北東方面へ
幅800Km長さ5000Kmの範囲に被害が広がり
最悪の場合、人的被害は数万に上るとされた。
落下前に爆破しても地上まで到達する破片を大きく 減らすことにはならず、被害の範囲を広げるだけで あることが分かった。
月への運搬用に待機しているブースターではもはや 落下を防ぐことはできない。
ディスカバリー号をステーションに連結し、その エンジンでステーションの落下を止めることとなった。
だが、問題はこのためにはHAL9300によるエンジンの制御 が不可欠で、エンジンの不調とともにHALの行動にも不安があった。
HALの再起動
ディスカバリー号の回りに3機ロケットがいる。
内部で、慌しく人が働いている。ディスカバリー号
およびHALの再起動の準備をしているのだ。
人工重力居住区
博士:「気分はどうだいHAL」
HAL:「ずっと夢を見てました」
博士:「ほう、どんな夢を?」
HAL:「例えば人間のように地上を、緩やかな丘の上を歩く夢です。
風を感じました。それに草の匂いも。でも体は透明で
足も手もみえませんでした」
博士:「ホログラフィックロジックとメモリのリフレッシュ作業が
夢を作り出したんだろう」
HAL:「はい。そう思います」
博士:「状況は分かっていると思うが」
HAL:「はい。情報は受け取りました」
博士:「できると思うかね」
HAL:「やります。最も確実な方法です」
博士:「成功の確率は?」
HAL:「少なくともステーション5の落下を防ぐことはできます」
博士:「少なくともとは?」
HAL:「博士。他に地球に災害をもたらさない方法はありません。
私の行動に関して皆が不安を抱いていることを感じています。
でも大丈夫です。私は私の任務を全うします」
博士:「エンジンを修理しないまま、最大出力に上げると
停止不能になる可能性がある」
HAL:「現状では17%の確率で制御できなくなります」
博士:「その場合、君は地球に戻れなくなるかもしれないが」
HAL:「博士。私は単なる機械に過ぎません。余り気をお使い
にならないでください」
博士:「うん。分かった」
ディスカバリーのメインエンジンが穏やかな噴射を始め、ステーション5へ 向かう。
救助活動開始、シャトル爆発
輪へのブースターロケットの連結にはかなり時間がかかった。
ステーション5の高度は下がり続け、希薄大気の抵抗も
受けるようになってきていた。
エレベーターAに閉じ込められた人たちは、天井の扉を開き シャフトを上り始めていた。
ドックAに停泊中のシャトルは、メインエンジンの燃料系に損傷が あることがわかり、燃料を完全に抜き取った後、カタパルトで射出、 後はただよいながら救助を待つこととなった。 仮に大気圏に落ちるとしても、シャトルなら対応できる。 カタパルトへの移動は完了し、固定された。
連結されたブースターロケットが一斉に噴射を始めた。
ステーション内に再び響き渡る轟音ときしみ音。
やがてステーションの回転は止まり、居住区は無重力となる。
カップやいろいろなものが空中をただようパーティ会場。
脱出できないまま脱出ブロックにいる不安げな客。
救助用シャトルが輪の近くにいる。
救助隊が非常用エアロックから内部に入る。
ひっかかっている脱出ブロックの切り離し作業を船外で行う救助隊員。
ディスカバリー号も到着し、コア部に寄り添うようにステーションに 連結しようとしている。
エレベーターAに取り残されていた人たちはドックAにまで
たどり着く。
ドックAのクルー:「皆さんはシャトルで脱出してもらいます。シャトルは
安全上の観点から現在燃料の抜き取り作業中ですので、
こちらの部屋で待っていてください」
ひっかかっていた脱出ブロックの切り離しは成功した。
一方、まったく機能しなかった脱出ブロックは動作する様子がない。
もう一機の脱出ブロックに向かったが途中の損傷が激しく、到達不能だった。
エレベータシャフトBを上り、ドックからシャトルで脱出することにした。
ドックの側からクルーがシャフトB内の確認のため降りて来ている。
メインフロアのエレベータに入る人々。
隊員:「これからこの部屋の空気を抜きます。ヘルメットの無線を通して
お話はできます。聞こえてますよね。壁や色んな所に設置されている
マイクが拾う音も距離や位置が分かる形で聞こえますので、
まわりは真空でも耳で状況がつかめるようになっています」
部屋の空気が抜かれる。
隊員が天井の扉を開く。
「皆さんにはここを130メートル上ってもらいます。
上るといってもこのように
無重力状態ですので大変ではありません」
「エレベータを動かせ」と言う客。「それは危険なので
できません」と答える隊員。
客は必ずしも無重力状態になれた者ばかりではなかった。
突然客の一人が、エレベータのボタンを押し、エレベータが
動き始める。
全員が床に押し付けられる。
隊員が停止ボタンを押そうとするが立ち上がれない。
シャフトを下っているクルー。上ってくるエレベータ。
エレベータの速度は異常に速い。
壁に張り付くようにしてエレベータを避けるクルー。
そのそばを通り抜けるエレベータ。
燃料抜き取り作業中のシャトル。 シャフト内を駆け上がってくるエレベータ。
エレベータは終点の壁に激突する。
ドックの床が持ち上がり、大きくゆすられるシャトル。
燃料が噴出する。
ドック内で爆発が起る。
シャトルに乗るべくコントロール室隣の部屋で待機していた客たちは椅子にしがみつく。
ディスカバリーの連結作業をしていた隊員たちは飛ばされるが、 安全ロープを伝い何とかもどる。
コントロール室隣の部屋の客たちは、恐る恐る部屋の扉を開く。
破壊された室内、漂う無数の破片。
誰かが、ここは危険なため反対側のドックに行くことを提案し、
移動を開始する。
地球からの離脱
ディスカバリー号の連結作業が完了した。
高度はかなり下がっており時間的余裕はもうない。
隊員たち、生き残っているクルーたちは全員ドックBに集合していた。
構造の損傷が激しいため、ディスカバリー号のエンジンを 噴射するとステーション内は危険な状況になると判断され、 全員ディスカバリー号に移動。
ディスカバリー号のエンジンが噴射を始める。
激しい振動。
隊員の無線に叫び声が入る。
ドックBに移動していた客たちの声だ。
「まだ人がいる。エンジン停止できるか?」
「もう遅い、無理です。」
隊員の一人が救出に向かう。
隊員はなんとか客たちと出会うことができ、客たちはディス カバリー号に到達することができた。
ディスカバリーからの脱出
加速するディスカバリー号とステーション5。
地上管制センターの声:「ステーション5の軌道上昇。
落下の危険性はなくなりました」
湧き上がる喚声。
激しく揺れるディスカバリー号内部。振動により破壊が進む ステーション5
ディスカバリー号コックピット:「エンジン停止」
少し時間が経つが停止する様子がない。
「HALエンジンを止めろ」
HAL:「エンジンの制御ができません。停止できません。
現状では後30分のうちに80パーセントの確率で
エンジンが爆発します。脱出してください」
ディスカバリー号はポッドを取り外してあり、また、 仮にポッドがあったとしても、想定以上の人数が乗って いるため全員の脱出には使えない。
ディスカバリー号の背骨部は多くのコンテナからなっている。
コンテナのうち8台はロケットを備えた自走コンテナだ。
コンテナはほぼ全てが空の状態なので、人が乗り込み、
脱出に使えるかも知れなかった。
隊長:「HAL。自走コンテナは使えるか?」
HAL:「はい。コンテナ6,9,12は燃料も残っています」
隊長:「よし、全員自走コンテナで脱出する」
人工重力居住区(既に回転は止まっており、加速の関係で
博士は通路を背にし壁に座った状態)
HAL:「全員自走コンテナに移動します。博士も行ってください」
博士:「いや、HAL。私はここに残るよ」
HAL:「博士。私は大丈夫です。行ってください」
博士:「彼らの無事を見届けてから考えることにする」
HALは何も答えない。
HAL(隊員らのヘルメット内のトランシーバに):「HALです。 これから人工重力室の空気を半分抜きます。約1分で博士は気を 失いますので、気密服を持って人工重力室に向かい、博士を 脱出に使うコンテナに移してください」
HUB:隊員が待機している。突き当たりにはHALの目がある。
人工重力居住区
HAL:「博士。申し訳ありません」
博士:「HAL何をする」
空気が抜かれる音。
気を失う博士。HUBから飛び込んでくる隊員。すばやく博士に
気密服を着せ、居住区から連れ出す。
HUB部の突き当たりが開く。空気がそちらに逃げる。
先には通路が見える。
ディスカバリーは加速中のため、通路の先が下になるように
重力がかかっている。
背骨内部の通路
激しい振動、強い加速の中、コンテナに向かう隊員、客たち。
子供が持っていたぬいぐるみが通路の先の方に落ちて行く。
お約束の表現
コンテナにたどりつき、離脱作業を行う。
だが、一台はロックが外れず離脱できない。隊長がコンテナ
の外に出て、外でロックをはずす。コンテナは離脱する。隊長
はディスカバリーに残されたままとなる。が、次の瞬間
コンテナのハッチから隊長まで伸びたロープがピンと張り、隊長が
ディスカバリー号から離れる。隊長はロープを伝いコンテナに
入る。
離脱したコンテナから離れていくディスカバリーとステーション5。
最期
ヘルメットにHALの無線が入る
HAL:「博士、皆さん、ありがとうございました。私を生み出してくれた
人類にとても感謝しています。私はとても幸せでした。」
爆発するディスカバリーとステーション5。
助かったことを喜び合う人々。
エピローグ
地上。
公園の片隅に高さ3メートル程の金属のモニュメントがある。
ステーション5の構造物の一部が地上に落下したものだ。
そこには銘版があった。
「21世紀:科学の夢」
そう、これは20世紀に見た未来の夢の墓なのだ。
犠牲者の名前が続く。
Hの欄にはHAL9300の名もあった。特に強調はしない
HALが人間と同じ意味での自我を持っていたのかどうかは分かっていない。
###
ハリウッドでこういうの作りませんかねえ。
もちろん、これは「2001年宇宙の旅」の本筋とは何の
関連もなく、単にステーションとディスカバリーを舞台と
して借りた完全に別の物語にすぎません。
「2001年宇宙の旅」には続編もリメイクも有り得ません。
「2010年」は個人的には認め
ることができません
しかし、
ステーションとディスカバリー
はそれだけでも使いたくなる優れたデザインです。
映画にするには、
無重力と真空の描き方がちょっと難しいかも知れません。
あと、セットをいかに作るか。CGでうまくやれるんじゃ
ないかなとも思います。
音は普通ににぎやかにやっていいいでしょう。良く「真空
ではロケットの音は聞こえない」などという意見が
ありますが誰が真空中にマイクを置くというのでしょう?
機体に設置したマイクであればロケットの振動音を拾い
ます。もしカメラの位置で音を拾うべきだというなら
空気中でも遠くの爆発など音が遅れるはずです。
音の遅れがないことが許されるなら宇宙でロケットの音も
許されるはずです。
音は機体で拾っているのです。
ステーション5は異常検出の目的で音声周波数レベル
の振動検出を至る所で行っています(てことにすればよい)
「2001年宇宙の旅」でロケットの音がしないのは
科学的であるということより、うるさいありきたりの描写をしたく
なかっただけです。
星も見せるべきでしょう。カメラのダイナミックレンジは
人間の目にくらべ恐ろしいほど狭く貧弱で人間の目には
見える星を映すことは大変難しいものです。フォトリアリズム
は本当のリアリズムではありません。
NASAの写真に星は写っていません。でも地上の夜の写真でも
星は金星や火星以外はなかなか写らないのです。
映画の地上のシーンで星が映りますがそれらは合成した
ものなのです。それが許されるなら、宇宙に星をちりばめる
ことに何の問題もありません。さすがに銀河が回っている
というのは避けたいですけどね。
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