◇酸化還元、定義に無理があるのでは
世の中には「仕組み」は分かるけど「意義・価値・存在理由」が分からないものがあります。
酸化還元の拡張解釈の説明が、何度聞いても、まともとは思えないのです。
狭義の酸化は酸素と結びつくことで、還元は酸素を失うことです。
今の化学ではこの定義は使いません。
酸化とは電子を失うことで、還元とは電子を得ること、というのが
定義となります。
これの現れ方として、酸素と結びつく、失う、水素と結びつく、
失うなどがありますが、あくまで電子を失うこと得ることが
酸化、還元なのです。
じゃ、摩擦帯電なども、酸化還元と呼ぶの?
いえ、あれは「物理現象」であって「化学」の対象ではありません。
化学の対象って何?
原子の結合状態が変わることです。と。
鉄の酸化、いつ?誰が酸化した?誰を還元した?
鉄(Fe)は水に入れるとごくわずかですがイオン化しFe(2+)やFe(3+)
となります。
電子を失うのです。
でもこれを普通酸化されたとは呼びません。(呼ばないようなんですよ;絶対に呼ばないという
訳でもないですが、無意味なので呼びません。イオン化傾向とは言っても酸化傾向など
とはいいませんしねえ)
なんだかんだあって、最終的に酸素と結びつきFe2O3などに
なることを「鉄が酸化された」と呼びます。
この例で鉄が電子を失ったのは水に入ったときです。いつ酸化された
ことになるのでしょう?
Fe(3+)になった時ではありません。酸素と結びついた時でしょうか?
酸素と結びついた時に電子を失った訳ではありません。
ということは水に入ったときに酸化準備に入り酸素と結びついた時に
酸化が完了したというのでしょうか?
鉄は酸化され、酸素は還元されたとされます。
鉄を酸化したのは酸素でしょうか?酸素が鉄の電子を奪った訳では
ありません。
酸素にしても出会った鉄イオンから電子をもらう訳ではありません。
NaClは?
例えばNaClは電子を失ったNa+と電子を得たCl-がイオン結合しています。
水中ではNa+とCl-イオンとして存在します。(溶ける範囲でですけど)
これが出会ってNaClとなった場合、イオン結合ですのでNaは+のまま
Clは-のまま弱くくっついているわけです。
必ずしもClがNaの電子を奪うわけではありません。Naは予め
電子を失っており、Clは予め電子を得た状態なのです。
酸化還元はいつ起きたことになるのでしょう?
水に入った時Naは水により酸化され、Clは還元され、
それらがたまたま出会った?
炭化水素の共有結合は?
水分子では酸素と水素が共有結合をします。
電子は酸素側に引き付けられます。共有されており
水素は電子を失う訳ではありませんが、確率的には酸素の近く
に居る状態が高くなります。
で、水素が電子を酸素に与え、酸化された。と。
これは電子はともかく水素は酸素と結びついたのですから
酸化されたで何の問題もありません。
さて、有機物。炭化水素の共有結合でも、電子はやはり炭素側に
偏ります。
この時水素が炭素で酸化されたと言います?
もし、電子の偏在をもって酸化還元というなら、金属を電界に
さらすと、電子はプラス側に偏っていくのも、金属のこっち側
が酸化されてあっち側が還元されたといわなければならないの
ではないでしょうか?
コンデンサも酸化側と還元側になる。
酸化還元を電子のやり取りとすることで何が得られるのか
酸素の関連しない酸化還元作用が説明できます。
いやいやいや。
それは定義を変えたからに過ぎず、定義を変えなければ
酸素の関係しない作用は酸化還元では無いというだけです。
例えば、 鉄が硫黄と結び付き硫化鉄になることを何で「酸化」と"呼びたい" のか、そう呼ぶことで何が得られるのか、全く理解できません。
電池の仕組みが酸化還元で説明できます。
なんで電池を酸化還元で説明したいのかさっぱり分かりません。イオン化傾向の差
でいいじゃないですか。酸化で放出した電子が直接還元に使われる訳ではないし。
離れた場所で酸化還元というのも無理やりのように思えます。
酸化数?余りにも無意味じゃない?
電子の話にし現実の状況との乖離が生じ、なんだか訳が分からなくなったためか、さらに訳の分からない方向に話が進みます。
イオンを経由する化学反応は一応電子を失った状態を考えることは
できます。
金属鉄の状態で直接酸素と出会うとどうなるのでしょう?
「そもそも金属というのが+イオンの集団が電子を抱えている状態 なのでイオンと酸素の絡み合いという点では同じだ」という 見方をするなら、電子を失う言い方がそもそもおかしいといえます。
それは置くとして、このようなイオンを経由しない場合、
酸化数というもので計算します。
酸化数というのは単体原子で0、他はイオンの電荷あるいは
それに準じるものとなります(結構ややこしい)
酸化数の増加が酸化を意味します。
そもそもこの酸化数が酸化することを酸化数の増加とする
として求められたとしか思えないご都合ものに見える。
酸化とはなんですか?
- 酸化数が増える事です
酸化数とはなんですか?
- 酸化の時に増える数です
何か意味があります?これに。
やっぱり酸素との話しに戻しましょう
「電子のやりとり」に変えてみて「お!美しい」などと思ったのかも しれませんが、結局意味がありません。
定義を元にもどしましょう。
想像ですが、
- 硫化水素と酸素の反応で硫黄が取り出せることを 酸化と呼んでしまった
- げっ!硫黄が酸素と結びつかない。
- じゃ、水素が離れることを酸化と定義しよう
- いくらなんでも、それはおバカな辻褄合わせじゃないの?
- う~ん。じゃあ、えーと、えーと、うん!電子だ。
あるいは、
- アルコールがアルデヒドになる反応を"酸化"と呼んでしまった。
- でも良く見ると酸素と結びつくわけではなくて、水素を失っただけ
- う~んこまった「んじゃ水素を失うことを"酸化"と呼ぼう」
- 反応でできる水(酸化水素)はどう解釈するの?
- 水?そんなものは見なかったことにすればいい
- アルデヒドはさらに酸化されるけど、全然仕組みが違うよね。
- う~ん、う~ん、う~ん。えーい!電子にしちゃえ!
本来は「アルコールがアルデヒドになる反応は化学でいう酸化ではない」とすべきだったのです。
「お酒のアルコール成分が酵素で"分解され"アセトアルデヒトになる」という 世間一般表現の方がよほどまともです。
### 補足
2009/9/28:
例えば銅イオンが電子を受け取り析出することを還元と呼ぶらしい。
でも、イオンになることを酸化とは呼んでいない。んんんんん。
結局「還元」という言葉が悪かったんじゃないかなあ と思っています。元に戻されるという意味合いなので、溶けていたもの が析出するのもつい「還元」といいたくなる。日常語と化学用語の 不鮮明性と物理に関する無理解でこんな「酸化/還元」という 変な定義を持ちこんでしまったのではと推測しています。
2010/6/6:
くどい記述を少しだけ簡素化。
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