◇量子もつれは無い;観測問題の残りカス
量子もつれ、あるいはもっと刺激的に、量子テレポーテーション。
例えば、
あるスピン0の粒子がスピン↑↓をもつ粒子2つに分裂した場合、
2つの粒子はそれぞれスピン↑とスピン↓を重ね合わせた状態で
生成され、片方を観測してスピン↑だった場合、もう片方はスピン↓
となる。
観測するまでスピンは確定できず、片方を観測した時、もう片方が
何万光年離れた場所にあったとしてもスピンが"同時に"確定する。
赤白ボール
単純に赤と白のボールがあって片方が赤であることが 観測できればもう片方は白であることがその瞬間に確定するという ことにすぎないのです。
遠く離れた点A,Bがあり、中間点から、ランダムに赤白ボールを
A,Bに投げる。このとき片方に赤ならもう片方は白というように
する。
A点で赤を観測すればB点では必ず白。
赤白振動ボール
単純な赤ボール、白ボールというわけではなく、
赤白状態が常に 入れ替わる「赤白振動」をしているボールがあり、これが2つの ボールで厳密に反対になるようになっている。かつ、A,B点で 同じ赤のボールを受けることはできないと想定すると、確かに極めて奇妙な状況にはなります。
片方、例えばAがある時点で赤のボールを受け取ると、それ以降 Bは白のボールしか受け取れなくなる。つまり、Aがボールを 受け取ることにより、離れた場所にあるBが受け取るべきボール の赤白振動が"同時に"止まることになるのです。
しかし、たまに「沢山のボールが投げ続けられる場合、Aが何もしないと
Bは赤と白をランダムに受け取るが、
Aが赤を観測し始めることにより、Bは白しか受けられなくなる。」
という記述を目にすることがありますが、完全な誤りです。
Aが受け損なった白のペアとなる赤をBは受け取ります。
Aが観測しようがしまいがBが受け取る状態が変化する訳ではありません。
赤白振動をしている状態と白固定の状態での振舞いが違うという 訳でもありません。
AがBのためのゲート制御ができるわけではないのです。
量子もつれに関連する量子振動は幻想である
素粒子は3次元空間に関して振動しており、この振動は空間に広がった 波として表れ、他の物体とのエネルギー交換を行う相互作用が起こる 時点では、それまでの空間における波の干渉があったかのごとく振る舞い ます。
しかしながらスピンその他、量子もつれに関連する「振動」はこのような 明確な振る舞いは示されていません。
あくまで、他と相互作用をするまで「不明」なだけです。
予め赤白になったボールと考えて何の問題もありません。ただ、他と エネルギー交換をともなう相互作用をするまでどちらともつかないというだけです。
「量子は決定論的完全時計に従い完全に仕組まれた乱数的振る舞いをし、
それはどれだけ時間がたっても全く狂わない」という意見も
おそらく間違っています。
最初に決まればよいだけで、狂わない、
相対論的遅延もない、完全な絶対時計機構などを
想定する必要は全くありません。
量子もつれは幻想である
そもそも離れた位置にある量子がいつまでも影響を与えあっていると
いう意味での「量子もつれ」そのものが幻想です。
別れた後、互いに影響を与えあわないのは「もつれ」ていない
ということです。
別れた時に決まり、観測した時に分かるだけです。
いまだにつづくオバカな「観測問題」の生き残りです。
人は同じ観測したものと完全に量子状態を作ることはできないだけ
量子のペアの片方が分かった場合、例えば、赤と分かった場合、 もう片方は観測しなくても白なのですが、この白と完全にマッチ する赤を人は作り出すことはできません。
なにも手が加わらない量子のペアを再び重ね合わせるとピンクに なるとして、片方を観測し赤だった場合、同じ赤を作り出して もう片方と重ね合わせれば何もなかったかのようにピンクになる かというとそうではないのです。
この現象を、「片方を観測した瞬間に、もう片方の量子状態が 変化したので、重ね合わせられないのだ」という意見もあります が、そもそも、ペアとなる2個をそれぞれ別に作り出すことが できないのですから、もう片方が分かった所でそれに対応する ように粒子は作れないのです。
この意見のとんでもないところは「瞬間に離れた場所で変化する」
と言いながら、その確認は両粒子を重ね合わせた時点でしか
できないことです。
「離れた場所での変化」など全く確認不能なのです。
「瞬間に離れた場所で変化したに違いない」では物理では
ありません。「瞬間に離れた場所で変化した」ことを
確認してから「量子もつれがある」と言うべきです。
補足
もちろん、観測することにより状態は変わります。 それは、例えば光反応のある物体に強い光を当てて観測すると状態が変わること と同じです。これはいわゆる観測問題や、量子もつれとは別 の話です。
量子もつれは量子コンピューティングとは全く関係しません。量子コンピューティング での観測による状態の変化は、観測で状態が確定したことによるのではなく、 観測により状態に干渉したことによるのです。
補足 2010/3/1
ときどき「量子もつれを確認した」という発表がなされます。
内容を良く調べれば分かるのですが、これらは、あくまで 分裂した後の2つの量子ペアを見つけたと言っているだけ なのです。
もちろん分裂後のペアを見つけるというのは凄いことだと
思います。
しかし、それは単にペアであって、分裂後互いに影響を
与えている訳ではありません。「もつれ」てなどいないのです。
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コメント
万象酔歩さんとお呼びして良いのでしょうか。
量子もつれについて何回かお書きですが、仰る通りだと思います。生成された2つの素粒子が量子もつれ状態にあるというなら、両者のスピンが観測された後、両者とも局所的磁場に入れ、downの素粒子に光を吸収させてupにしたら、もう片方の素粒子は光を放出してupからdownに変わらなければおかしいですよね。でも、そんな実験の報告はありませんよね。
私も酔歩さんと同じで生成された瞬間にupとdownが決まっていただけだと考えています。
どうも学者の皆さんがそう考えない原因の始まりは不可弁別性(同じ種類の粒子は区別できない)が信じられていることにあるのではないかと思っています。ところが、ご存知のように、中学でも高校でも確率計算をするときは、問題文に区別がつかないと書いてあっても登場する物体は全て区別がつくものとして場合の数を考えるのが鉄則になっています。もし、区別できないとして数えるとコルモゴロフによる確率の公理に矛盾する結果が現れてしまいます。
十分に大きい直方体の容器に2個の同じ種類の粒子が入ってランダムに運動しています。(相互作用は無視します。)頭の中で容器を左右に2等分したり、上下左右に4等分したりして考えます。
2個が区別できるとします。それぞれをA,Bとします。まず、容器を2分割して考えます。任意の瞬間に考えられる場合(事象)は
[左にAとB],
[左にA,右にB],[左にB,右にA]
[右にAとB]
の4通りです。これらが同様に確からしい(同じ確率で現われる)と考えるならば、出現する確率は
[2個とも左]→1/4
[1個が左,1個が右]→1/2
[2個とも右]→1/4
となります。
次に容器を4分割して考えます。任意の瞬間に考えられる場合(事象)は
以下、[左上,左下,右上,右下]で表します。
[AB,0,0,0][A,B,0,0][B,A,0,0][0,AB,0,0]
4通り
[A,0,B,0][A,0,0,B][0,A,B,0][0,A,0,B][B,0,A,0][B,0,0,A][0,B,A,0][0,B,0,A]
8通り
[0,0,AB,0][0,0,A,B][0,0,B,A][0,0,0,AB]
4通り
なので、やはり、出現する確率は
[2個とも左]→1/4
[1個が左,1個が右]→1/2
[2個とも右]→1/4
となります。
2個が区別できないとします。
まず、容器を2分割して考えます。任意の瞬間に考えられる場合(事象)は
[左に2個],
[左に1個,右に1個]
[右に2個]
の3通りです。これらが同様に確からしい(同じ確率で現われる)と考えるならば、出現する確率は
[2個とも左]→1/3
[1個が左,1個が右]→1/3
[2個とも右]→1/3
となります。
次に容器を4分割して考えます。任意の瞬間に考えられる場合(事象)は
[2,0,0,0][1,1,0,0][0,2,0,0]
3通り
[1,0,1,0][1,0,0,1][0,1,1,0][0,1,0,1]
4通り
[0,0,2,0][0,0,1,1][0,0,0,2]
3通り
出現する確率は
[2個とも左]→3/10
[1個が左,1個が右]→2/5
[2個とも右]→3/10
と矛盾した結果になってしまいます。
ご存知のように、現代物理学はギブスのパラドックスの解決のために不可弁別性を導入したのですが、実は同じ種類の粒子が区別できると考えてもギブスのパラドックスは起こりませんし、フェルミ分布もボース分布も導けます。何人かの研究者がそれを主張していますが、まったく無視されています。
万象酔歩さんからも、不可弁別性が間違いであることを書いていただけないでしょうか。
投稿: 岡安一壽 | 2020年10月 9日 (金) 18時46分
コメントありがとうございます。
確かに詳細に検討し直すべき問題かも知れませんね。
ただ、私は「交換可能なエネルギー状態にある粒子は互いを交換した状態と交換しない状態は区別できず、合わせて一つの状態としての統計的振る舞いをする」ということに疑問は持っていません。
量子の統計は特殊です。
我田引水的になって申し訳ないのですが、例えばY方向のスピンが+とした場合、異なるΦ方向のスピンは+であったの確率も-であった確率もありません。Φ方向のスピンはY方向を確定しない場合の確率しかありません。量子の統計はそのようなものです。この辺りは「◆量子もつれ:「ベルの不等式」の大嘘」(http://k-hiura.cocolog-nifty.com/blog/2020/08/post-3d66a9.html)で述べています。
事象空間を分割してその中での存在を想定することと量子の統計とはそのまま相入れるのでしょうか?
なお、量子もつれですが、量子もつれはあくまで観測までの話で、観測後に状態の変更を加えても他方に影響を与えるとはされていないと思います。
大変刺激になりました。
今のところ不可弁別性は正しいと思っていますが、今後考えは変わるかもしれません。
ありがとうございました。
投稿: | 2020年10月10日 (土) 12時00分