« ◇蝶の構造力学 | トップページ | ◇クモと昆虫の大きな隔たり:昆虫は空を飛ぶ »

◇昆虫の飛翔力学(蝶は鱗粉で飛ぶ)

昆虫の飛翔に関する力学的な解析はどのくらい進んで いるのでしょう?

飛行機の飛ぶ仕組みは良く目にします。翼の上面の 空気の流れが早く、下面の流れが遅いため、圧力 差が生じ翼を持ち上げる。。。

鳥の滑空も飛行機と同じです。羽ばたきにも特に 疑問は感じません。
十分な強度と力さえあれば鳥をある程度巨大化 しても空は飛びそうです。

昆虫は飛行機や鳥とは全く異なる原理で飛んでいる ように見えます。

なんと言っても翅(はね)の形態が飛行機の翼(はね) や鳥の羽(はね)とは全く異なります。

駆動翅は蝶以外はいずれも薄いフィルムです。
蝶は厚みのある、細かな毛の生えたシートのような 形態です。
(「駆動翅」という変な記述は甲虫の前翅を含めない ためです)

同じ昆虫とはいっても飛ぶ仕組みは幾つかに分かれている と考えています。細かなことは全く不明ですが、

  • 甲虫類の飛び方:前翅が固定翼となり、揚力を得る。 後翅は空気を一定方向に押し出すことにより、推力 および揚力を得る?
  • ハチ・ハエ類:波打つように翅を動かし空気を 押しやりその反作用で動く?
  • トンボ類:前後の翅の動きに位相差を設けることに より広い羽で空気を押すのと同等の反力を得る?
  • 蝶:一度の羽ばたきで起こる空気の 塊(渦になっていて直ぐには消えない;とは言えコンマ何秒)に乗る (空気の玉乗りみたいなもの)、 あるいは上にできる空気の塊(渦)にぶら下がるように
といった風でしょうか。
ちなみに蝶の鱗粉も空力学的な効果 のためのものだと考えています。さらには、鱗粉が少しはがれ空気に 練りこまれることより、空気の性質を少し変えている可能性も 考えられます。
もちろん、翅脈が空力学的効果のためのものであることは言うまでも ありません。

おそらく最もエネルギーを使わないのが蝶飛びで次がトンボ飛び でしょう。
・蝶飛びの利点は、鱗粉の効果で羽音を立てない事と、捕食者からみて 動きの予想が難しいことにあります。
・トンボ飛びでは、 分離した前後の翅の位相を調整することにより、ホバリングはもちろん 素早くバックすることも容易です。ただし、身体にくらべ若干大き目の 空間を要求します。
・ハチ飛びでも、翅は前後にありますが、トンボ程分離していないので、 ホバリングはできても、トンボのように素早く自由に空間を移動することは できません。トンボ飛びにくらべ小さな空間ですみます。
・一見ハチににてはいますがアブ(ハエ)の場合、翅が前後に分かれていないので、 ホバリングも難しくなります。
・甲虫飛びはアブ以上に細かな制御が難しくなっています。

「昆虫の飛翔力学」という一般本が出てこのあたり がつまびらかにされることを期待します。

### 2008/11/11
色々調べると、研究は結構進んでいるようですね。
まだ、「蝶は鱗粉でとぶ」とか「昆虫飛行省エネランキング」など といった科学読本レベルに落ちてきていないだけで。
(なお、鱗粉が飛行に関係しているという記述は見つかっていません。 でも、あのサイズ、あの重量の飛行物体で表面の小さな細工が 力学的影響を与えないとは到底信じられません。 サメはサメ肌で泳ぎ、ゴルフボールはディンプルでとび、 蝶は鱗粉でとぶ"はず"です。

###
2009/4/13 タイトルに「(蝶は鱗粉で飛ぶ)」を追加。
2010/5/15 関連記事を◆翅脈翼と鱗粉翼:高性能航空機をめざして に置きました。

###
昆虫力学3題

|

« ◇蝶の構造力学 | トップページ | ◇クモと昆虫の大きな隔たり:昆虫は空を飛ぶ »

トラックバック


この記事へのトラックバック一覧です: ◇昆虫の飛翔力学(蝶は鱗粉で飛ぶ):

« ◇蝶の構造力学 | トップページ | ◇クモと昆虫の大きな隔たり:昆虫は空を飛ぶ »