◇眠れる迷える輝ける:現在進行連体活用
### 2015/11/22
この記事では「眠れる」「迷える」「輝ける」などを
「(非積極的)現在進行形連体活用」としましたが、
その後、「完了形連体活用」の方が適切であろうと考えを変えました。
例えば土佐弁では完了形「眠っちゅう」「迷っちゅう」「輝いちゅう」と
完了形が用いられます。
日本語の動詞の殆どが変化動詞ですので、変化の完了した状態は、完了形となります。
次の句を検証します。
- 眠れる森の美女
- 迷える小羊
- 彷徨えるオランダ人
- 輝ける日々
- 怒れる12人の男たち
"~(え)る"の形式は普通「受け身」「可能」や「尊敬」に使われます。
冒頭に挙げた文はどうでしょう?
これらは「受け身」でも「可能」「尊敬」でもありません。
これらは「現在進行形連体活用」
とでもいうべきものです。
(加えて、非積極的進行のニュアンスがあります)
- 眠る森の美女:現在形連体活用
- 眠れる森の美女:現在進行形連体活用
- 眠っている森の美女:助詞を用いた体言句
この"~(え)る"現在進行形連体活用は特殊で、少なくとも現代日本語的ではありません。
例えば「奥の細道」に
- 住める方は人にゆずり..
古い表現にはあるとしても、
気になるのが冒頭に挙げた文は全て明治以降の翻訳文だと
いうことです。
おそらく翻訳家たちが「進行形で修飾された名詞」を翻訳する
ときに、既に死語と化していた表現を復活させたのでは
ないでしょうか。
つまり
「古語表現を踏まえた翻訳口調」なのです。
ここでは「活用」と書きましたが、分解すると"已然形(いぜんけい)"活用'え'+'る'です。
已然形は時制(相)を示す語を付加して、完了、進行、仮定などを構築する ための形です。 この形が現在では仮定形に進化しました。
「る」は状態を表す「り/る」の「る」です。
「り」は「われ奇襲に成功せ"り"」の"り"で完了を表します。
「る」は進行連体で、他に「し」(完了連体)なども付加することができます。
この「(え)る」進行形連体活用はどんな言葉にも適用できるでしょうか?
「走れる人」「喋れる人」「立てる人」「座れる人」「焼ける人」 。。。あまり 自然な感じはしないですよね。状況が見えないからでしょうか? 自動詞のみ可能かとも思いましたが、 「炭やける山の民」などというとそれっぽい感じはします。
「食べる」だとどうなるでしょう?
「食べられる人」?いや、もしあるとしても「食べれる人」でしょう。
"ら抜きこそ古典的正解?"
いずれにしろ、可能/受身などと形態が同じであるのは使う上で
無理があり、固定化された表現以外に用いられることはないでしょう。
そもそも、根本の已然形が消滅していますしね。(多分、江戸の頃には
すでに消滅して古典的表現だったんじゃないかと思っています)
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