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◆目のリアリティ(怪獣=人間編)

昭和35年あたりから40年を過ぎたくらいまで、日本は怪獣に蹂躙される 大怪獣時代でした。(「昭和のジュラ期」と呼ぶ人もいます。)

小学校の授業中、怪獣のデザインをノートにいっぱい描き散らかしたり もしていました。

怪獣を描くとき困ったのが"目"です。

実はTVの怪獣の目が皆、白目を持つ切れ長の人間の目 になっていることに若干の不満を持っていたので、 もっとリアルな動物の目にしたかったのです。

人間以外の普通の動物の目は白目を殆ど持ちません。目だけ取り出すと いわゆる"つぶらな目"をさらに強調したような形態をしています。

そのため、人間以外の動物の目に近いものにしようとすると、妙に 目だけが可愛く見えてしまうのです。

(黒目を入れないというのも不気味さを出す手なのですが 死んでいるようにも見えます。虹彩部の色を薄くする のもあまり成功しませんでした。もっと研究すれば いい表現はあったかもしれませんが)

で、結局TVの怪獣デザイナのセンスに感心するわけです。

人間の目こそが「怪獣にふさわしい怖い目」なんだと納得しました。

さて、人間の目はどうして白目部が多いのでしょう?

両眼立体視をしない動物は一般に、目の向きが左右に広がり、 拾い視野を持ちます。

眼球内で目玉を動かし、視野を変える必要は殆どありません。

これに対し両眼立体視をする人間は、ほぼ前方にしか視野が ありません。

この狭い視野を補うために、眼球内で目玉を動かし、視野を広げる ようになっているのでしょうか?

いいえ、眼球を動かしても、視野は広がりません。
立体視領域も広がりません。
範囲は逆に狭まります。

目玉を動かす理由は、人間の目が、中心部が周囲に比べ 視力が高いことと、何かに集中することにあると 思っています。

両眼立体視をする動物でも人間以外は大きな白目を持ちません。
これは人間のように中心部に集中することがないからでは ないかと想像しています。
人間に近いチンパンジーなどでも、顔を動かさずに目玉だけ キョロキョロするのを見たことがありません。※

白目を持ち、キョロキョロできる目は、対象への集中が 強調されます。
白目には単に目玉を動かしやすくするだけでなく、 見ている方向を示す意味もあるのです。
これが、人間の目の怖さの理由です。

この視線の怖さは、人間を襲う動物も感じるのでは ないでしょうか?
人間はこの白目を持つ「怖い」目で生き延びる可能性を 高めたのではないでしょうか?
これが白目のもう一つの意味だと思います。

そうして、昭和の怪獣たちもこの目を持ったのです。
動物の目じゃない、という表面的なリアリズムの欠如の裏には 別のリアリズムがあったのです。(ちょっと無理がある?)

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昔、ショートショート童話みたいなものを書いたことがあります。 特に発表しはしませんでしたが。
その中の一つ。「人間の目を持ったインパラ」
こんな大筋です。

仲間からいじめられていた弱いインパラが、人間の目が欲しいと 望み、人間の目を持つことができました。 仲間のインパラはその目を恐れました。 ライオンなど の肉食動物もその目を恐れ、やがてそのインパラはサバンナの王となります。
王にはなったものの、孤独で、 最後にその目は涙を流します。

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映画「2001年宇宙の旅」では岩陰でヒトザルが視線を キョロキョロさせることによりその不安さを表すシーン があります。
視線は固定することにより「怖い」ものとなりますが、 不安定にすることにより逆に弱さを表すことになります。 ともあれ、これは「ヒトザル」が既にほぼ「ヒト」レベルにあることを 示しています。

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目のリアリティ3題

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