◇エイトマンの心;鋼鉄のレプリカント
「ブレードランナー」を見てエイトマンを連想した人もいるのではないでしょうか?
(本文は後ろに移されました)
### 蛇足
逃亡を続けるデッカードは自分の並外れた能力に
少しずつ疑問を持つようになる。
ある日、デッカードは自分の名が刻まれた墓を見つける。
そこにガフが現れる。
「そこに眠っているのが本当の君なんだよ。デッカード君」
「この日付は?」
「君に逃亡レプリカントの処理を頼んだ日の2日前だ。
本物のデッカードは彼らに殺された。 デッカードの記憶は、 別の目的で作られていたレプリカント体に急遽移植された。 それが君だ。
実はあの時点で君は誕生して1日しかたっていなかったのだよ。」
「だが、俺にはあの前に奴らと会った覚えはないぜ。」
「記憶を完全に移すことはできなかった。
記憶の一部は別の人間のものを入れた。
別れた奥さんがいるだろう?デッカードは 結婚していない。
あれは私の記憶だ。」
ガフがデッカードに対してとる微妙な態度の裏には、本来他人には
知られたくない自分の記憶をデッカードが持っているということが
あったのだ。
ガフにとってデッカードは自分の分身ともいえるのだ。
「別の目的で作られていたレプリカントと言ったな」
「高順応型超高速駆動ロボット、ネクサス8だ。
君は自分の能力が人間を超えていることに気が
付いているはずだ。
これまでのレプリカントのレベルも超えている。
実は、君の体にはまだ発揮していない、とてつもない
能力が仕込まれているのだよ。」
ガフは内ポケットからシガレットケースを取り出した。
「その能力は膨大なエネルギーを必要とし、そのままでは発生する
熱のために、君の体はメルトダウンを起こしてしまう。
これはその熱の発生を制御する冷却剤だ。
安全のため今はその能力は封印されている。最初にこの
冷却剤を取り込んだ時点で封印は解かれる。」
「能力?」
「吸ってみたまえ。
注意しておくが、落ち着くまで動かないでくれ。
危険だからな。」
デッカードはシガレットケースを受け取ると、タバコ のような物を一本取り出し吸った。
デッカードの体に変化が起こった。
みるみる内に皮膚が金属状に変わったのだ。
デッカードは黒光りする自分の手を見つめ、
そしてその手で自分の顔を確認した。
鋼鉄製のロボット。
ガフはデッカードから少し離れ、ピストルを取り出した。
「デッカード君」
そういう言うと、ガフはロボットとなったデッカードに向け
ピストルを3発続けざまに発射した。
デッカードは飛んでくる弾を目にもとまらぬスピードで手でつかんだ。
「それが君の能力だよ。
人間のおよそ1000倍のスピードで動ける。
弾より早く走れるし、634メートルのタワーを
飛び越えることもできる」
「しかし、この体は」
「安心したまえ。
いつでも元の姿に戻れる。
いやそればかりではなく、別の顔、別の体型になることだって
できるんだ。
残念ながらネクサス8型と7型は社長の死によって量産にこぎつける
ことが出来なかった。レイチェルは7型のレプリカントだ。
君には今後やってもらいたいことがある。
宇宙局特務隊は7人のメンバーで構成されている。
君は普段は退役ブレードランナーのデッカードとして生き、
事件が発生した場合、特務隊の8番目のメンバーとして
活躍してほしいのだ。
第8の男"エイトマン"と名乗りたまえ。」
「エイトマン。。。」
デッカードはロボットから元の姿に戻った。
「走れエイトマン。
鋼鉄の胸を張れ」
現在ハリウッドで製作中のエイトマンの冒頭シーンです。うそです。
### 蛇足-2
「エイトマン。。。eighth manじゃなくエイトマン」
「eighth manでは説明になる。これは固有名詞だからこうあるべきなのだ」
「そうか、一人でも"スーパージャイアンツ"みたいなものだ」
「ちょっと違う」
「一本でもニンジン」
「全然違う」
### 蛇足-3
エイトマンの息子が現在日本でお笑いタレントとしてTVに
出ています。うそです。東八郎違い。
### 蛇足-4
日本中にエイトマン神社があります。うそです。はちまん(八幡)神社です
### 蛇足-5
「。。。たまえ」って言い方、劇以外で本当に使われることあるのでしょうか?
### 2008/6/10
「ブレードランナー」のBDを購入しました。最初のすだれ模様の木の
マークがとても安定していてさすがだと思いました。
久しぶりに見なおしたのですが、やっぱりデッカードはレプリカント
でしょう。しかもレイチェルはそれを感じている。ひょっとしたらロイ
もそれに気が付いてデッカードを殺さなかった・・
ところで、
映画というのはやっぱり最初に見た版が一番です。デッカードの
ナレーションの入ってるやつ。最後はデッカードとレイチェルの逃亡シーン。
映画監督はいくら気に入らない点があっても、発表した作品を
大きくいじっちゃいかん。しかも色んな版を作るなんて。「2つで十分ですよ」
とは言え、最初の版では「デッカードもレプリカントに違いない」と
いう匂いが薄すぎるかもしれませんね。
ところでところで「何か変なものが落ちてるぞ」ってもっとはっきり
しかも何度も入っていた印象があるんだけど。。。
### 2008/6/19
「ブレードランナー」BDの音声解説を聞きました。
監督のリドリー・スコットは明らかに「デッカードはレプリカントである」
として作り上げようとしているのに、他のスタッフは全員「デッカード
は人間」としたがってるみたいですね。
監督が最初の版が気に入らない一番の点はやはりナレーション(デッカード
が自分は人間だと思ってしゃべってる)のせいで、デッカードが
レプリカントであると観客が気づいてくれないことなんですね。
で、ナレーションを消し、デッカードの個人的記憶である「ユニコーン」
をガフが知っている(デッカードがレイチェルの個人的
記憶について知っていることと同じ)ということを示し、デッカードがレプリカント
であることを明確にしたのです。
監督の解説の中に「ネクサス7」のみならず「ネクサス8」という言葉も出てきました。
これはやはり。。。 デッカード->8マン で続編?を作ってもらわねば。
「走れデッカード。弾よりも速く」
### 2009/7/11 補足:蛇足-6
映画「ロボコップ」がエイトマンと同様に"殺害された警官の記憶を
埋め込まれたロボット"と思っている人も多いようですが、違います。
ロボコップの脳は電子頭脳ではなく、人間マーフィーの脳そのもの
です。決してマーフィーの記憶と人格を電子頭脳に移植したのではありません。
ロボコップは最後に名前を聞かれ「マーフィー」と自信を持って
答えます。ロボコップは人間の体こそ持っていませんが、人格は
マーフィーそのものなのです。もし、エイトマンが名前を聞かれても
「東八郎」と自信を持って答えることはできないでしょう。
エイトマンは人間でないばかりではなく、自分が自分だと
感じている東八郎でもなく、東八郎のコピーに過ぎないのです。
エイトマンとして誕生して以来積み重ねられたものはエイトマン
の正真正銘の人格といえるのですが、東八郎へのこだわりが
エイトマンを悩ますのです。
エイトマンは記憶と人格が移植されるという、サイバーパンク
物語なのです。これは後のディックが好んで取り上げた主題です。
ロボコップはどちらかというとサイボーグ009か
人間の姿に戻れない改造人間仮面ライダーなのです。
デッカードが東八郎ならマーフィは本郷猛なのです。
トゥッ!イイッ!!
### 蛇足-7:「一本でもニンジン哀歌」
♪毎日毎日ターンテーブルのゴムに張り付き、いやになっちゃうよ。
。。。
♪背中のたいやき歌うけど、誰も僕には見向きもしない。
「それ、メロディー、たいやきだしよう。。」なぎらけんいち
### 蛇足-8:
みんななぜか「♪いやんなっちゃうよ」と覚えているけど、子門真人は
「♪いやになっちゃうよ」と歌っている。と。
### 蛇足-9:
「デッカード君」
そういう言うと、ガフはロボットとなったデッカードに向け
ピストルを3発続けざまに発射した。
銃弾はデッカードの額と肩、胸に命中した。
「あーっ!!ごめんごめん。君なら避けられると思ったんだ。
ま、まあ、ピストルの弾くらい何でもないことが分かっただろう。
それが、君の能力なんだよ。
デ。。。デッカード君?
大丈夫だよね。?
。。。」
### 蛇足-10:
「たいやきくん君」の記憶/人格はどのようになっているのでしょう?
彼らは毎日大量に生産され消費されていきます。
それぞれ別の個体のはずです。昨日のたいやきと今日のたいやきで人格が継承されるのでしょうか?
そうでなければ「毎日、毎日。。。。いやになっちゃう」という連続性を得ることはできないはずです。
連続しているのは。。そう、たいやきを焼いている人か、あるいは金型(鉄板と歌では歌われている)です。
多分金型を通して記憶・人格が連続していったのでしょう。つまり、金型が東八郎で、お店の主人が谷博士、
たいやき君はエイトマンなのです。あるいは、たいやき君は記憶を移植されたレプリカントです。
### 2008/9/5
本文を後ろに移しました。そ、そんな。。
### ここから本文
エイトマンはロボットですが、
悪人によって殺された人間、の記憶が
移植されています。
他人の記憶を埋め込まれたレプリカントと同じなのです。※
エイトマン自身の人格は人間時代から連続したものです。
しかし、本来の人格を持つ人間は既に死んでいます。
「自分は何者か?」エイトマンは当然悩みます。
視聴者も子供ながらに悩みます。
もし自分の記憶をロボットに移すことができたら、それは
自分か?
その上でもし自分が死んだら、自分はロボットとして
生きながらえているといえるのか?
あるいは、自分がロボットの方だとすると、ある日
突然体がロボットに変わり、しかも本物の自分が
別にいることになる。
自分とはなにか。
記憶こそが「自分」だとすると、体を離れた純粋な記憶も 自分と呼ぶか?
今生きている自分も、体を構成している物質自体は
日々置き換わっている。
にもかかわらず、「自分」は継続している。
「エイトマン」は「自己とは何か」を子供に問う「哲学アニメ」なのです。
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忘れてはならないのが「なやんでいても仕方ない」と現実に立ち向かう、力に満ちた
アニメでもあります。(悩むだけの、悲惨な映画もありました)
### ※
映画の中で記憶の埋め込みが示されるのはヒロインのレイチェルのみ
です。逃亡レプリカントたちは逆に記憶を欲しがっています。
デッカードは多分記憶を埋め込まれたレプリカントなのですが、
本人は気がついておらず、映画の中でも明確にはされません。
### ここまで本文 ###
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昭和のロボット3題
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