◇あり、おり、知らない;日本語の状態動詞
基本の状態動詞
日本語の動詞の殆どは変化動詞です。状態を表すものではありません。
状態を表す動詞としては
- ある
- いる
他に
- おる
古文だと
- あり、おり、はべり、いまそがり
変化動詞の状態表現
変化動詞の状態表現には、「て」を付加した上、
状態動詞「ある」「いる」あるいは
その省略表現である「る」を付加します。
例えば
- 「持つ」の状態表現は「持っている(持ってる)」
- 「食べる」の状態表現は「食べている(食べてる)」
そして、
- 「知る」の状態表現は「知っている(知ってる)」
変化動詞の状態表現の否定形
さて、状態表現の否定形はどうでしょう?
- 「持っている(持ってる)」⇒「持っていない(持ってない)」
- 「食べている(食べてる)」⇒「食べていない(食べてない)」
ところが、
- 「知っている(知ってる)」⇒×「知っていない(知ってない)」
自然な表現では
- 「知っている(知ってる)」⇒○「知らない」
「知る」は半状態語である
「知る」は変化動詞なのですが、その形態的否定語
- 「知らない」は変化の否定語ではなく、否定状態を表す語
つまり
- 日本語の状態動詞は「ある」「いる」「知らない(否定形のみ)」
「知る」は単体では変化語ですが、その否定「知らない」「知りません」 が「状態語」となる「半状態動詞」なのです。
否定語の時制に関する考察が [◇食べてない;疑問文過去形に対する否定応答の時制]にも書かれています。
#「知らない」が特殊化した理由
「知らない」が特殊である理由の一つは「知る」という変化が
認識しづらいということがあると思います。
意識的動作と見なし難いこともあります。「覚える」というのは
「作業」ですが「知る」というのは「作業」とは言いづらい面
があります。
「覚える」ことは否定できても「知る」ことは否定が難しい
のです。
「知る?」などという現在形疑問が考え難いというのもそもそも "知る"という概念がかなり特殊なものであることを示しています。
(2008/6/29)あるいは、そもそも「知る」は状態動詞だったのが
他の言葉につられて変化動詞になったということも考えられます。
「知らない」は頻度が低いため古い言い方が残った。
例えば「君知るや南の国・・」という表現では「知る」は状態を
表す言葉です。
# 状態活用(現在進行形連体活用)
状態語でない語でも、体言に結びつく場合、現在進行状態
を表す活用ができる場合があります。
例えば
- 眠れる森の美女
- 迷える子羊
これらに関する考察を ◇眠れる迷える輝ける:現在進行連体活用に置きました。(2008/9/21)
#他の言葉
「存じる」についても考える必要はあるかもしれません。
英語ではknowそのものが「特殊」な状態語となっています。
他の言語ではどうなのか興味が沸きます。
### 余談
タイトルが「ある、いる、知らない」でなくて「あり、おり、知らない」
となっているのはもちろん「あり、おり、はべり、いまそがり」を
連想してもらうためです。
ちょっとわざとらしすぎるかも知れません。
### ところで
「あり、おり、はべり、いまそがり」というのは妙に語呂が良くて
気にいってるんですが、
「いまそがる」って本当に普通の言葉として使われていたんでしょうか?
あんまり見たことが無いように思います。
「××の大将いまそがりて。。。」というフレーズが有ったような
気もしますが、当時としても特殊な言葉だったとか、
ある特定の著者しか使ったことのない言葉だとかって
ことはないのでしょうか?
あるいは"流行語"のように一時期のみ使われた
言葉だった。
([◇通りすがりのイマソガリ]参照 2008/4/26追加)
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