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◇い抜き言葉は進化するか

このブログでは、結構意識して積極的に"い抜き言葉"を使っています。

理由の一つには軽い感じにしたいというのがあるのですが、大きな理由は、 時制(相)感を無くしたいためです。
◇進行形と完了形;土佐弁考察 で、「読んでいる」という言葉の代わりに"い抜き"の「読んでる」を 使ったのは、「読んでいる」だと進行形のイメージが強すぎると 感じたからです。

意識して使っていたため、世の中での実際の使われ方でちょっと 気になったことがありました。

実はTVで"い抜き"言葉を次のように使い分けているのでは ないかと思われるナレーションがあったのです。

  • 「大事にしています」:進行形
  • 「知ってます」:完了形
TVでは一文の中に2つ出てきたのではないのですが、例えば
  • 「皆がそれを大事にしている事を私は知ってます。」
などという言い方も有り得るかも知れないと思ったのです。
(実際の言葉が"大事にしています"だったかどうかは、曖昧 です。)

広く日本で使われる"東京弁ベースの言葉"からは完全に 消えてしまったと考えられる進行形と完了形の区別です が、言語感覚の根幹には残っているの ではないか、と思うのです。

言語とは単に音で情報を伝えるものではありません。
情報を伝えるだけなら、「ぎゃー!」と叫ぶだけで 危険を伝えることができます。
言語は概念を記号化し、複数の概念の関連、論理を何らかの ルール、文法に則って組み上げるものです。

一部の鳥は音声的には人の真似ができますが、言語と ならないのは、彼らが文法を持たないからです。
チンパンジーにいくら手話や記号キーボードを教えても 言語にならないのは、彼らが根本的な所で 文法脳を持っていないからです。
イルカの音声がいくら地方地方で"方言"を持つから といって言語とはいえないのは、文法に基づいた複雑 な構成、をとらないからです。鳥でも歌は学習で 身に付けるので地域毎による差、"方言"があります。
鳥の歌のパターンを"文法"と拡大して言われることも ありますが、文法は記号で表される概念に結びつき、論理を 与え組み立てるものであり、鳥の歌は単に"パターン" に過ぎません。

人間の脳には文法原理が組み込まれていることは間違い ありません。
そしてその要素として"完了"、"進行"があることも 間違いないでしょう。

もちろん、脳の中に予め用意されている文法原理の 全てが実際の言語に持ち込まれるとは限りません。
使われなかった文法原理は封印されてしまうでしょう。
ただ、表面に出ないまま、深い部分では生きている可能性 もあります。深層文法があるのではないかということです。

そこで、ひょっとしたらと思ったのが、"い抜き"言葉が 深層文法の完了形の表層化として使われるようになるのではないかという 事なのです。

もし、「この本を読んでいる?」と聞かれ

  • 今読んでいる(い有り)
  • もう読んでる(い抜き)
というのを自然と感じる人がいれば、深層文法が"い抜き"の形 で表層化しているのです。

い抜き言葉が、本来の手抜き言葉でなく、新たに文法的意味合い をもった言葉に進化する可能性があるのではないかということです。

まあ、日本語文法は余りにも論理的隙が無さ過ぎるので、い抜きには 時制(相)の曖昧化の機能を持たせるだけにとどまってもらっても いいかなあ、とも思います。

### 補足

「大事にしています」は 「大事にする」という変化動詞の完了形と解釈することも可能 です。
「知ってます」は「知る」ということが完了した状態であって、 「知る」ということが継続しているわけではありません。
しかし、「大事にしています」は「大事にする」ということが継続 しているので"進行形"とすることに無理はありません。
ちなみに、土佐弁では「大事にしちゅう(完了)」と「大事にしゆう(進行)」 どちらも可能だと思います。

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関連記事を ◇イ抜きかア抜きかに載せてあります。

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