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♪パッヘルベルのカノンの構造


上図は「パッヘルベルのカノン」の全体構造を示したものです。図上のブロックは テーマを表しています。クリックすると音が出ます。例えば、赤のブロック をクリックしてみてください。
(2008/9/21)テーマを組み合わせて演奏できるオモチャを [♪パッヘルベルのカノン切り貼り演奏機]に置きました。こちらもぜひご覧ください。

カノン:輪唱

パッヘルベルのカノンは、2小節単位で繰り返す通奏低音 の上に4小節単位のテーマを3つの音部が、2小節ずつ ずれて演奏される形式をとっています。
いわゆる輪唱の形式です。
「カエルの歌」と同じ要領です。

「カエルの歌」でいうと「カエルの歌が、聞こえて来るよ」で1テーマ4小節分です。
4小節のテーマとは言っても、殆どのテーマにおいて、前2小節がテーマで後ろ2小節は その対旋律、あるいはハモリとなっています。
「カエルの歌が、聞こえて来るよ」というテーマの後半 「聞こえて来るよ」が「カエルの歌が」の3度上になっている のと同じです。

「カエルの歌」ではテーマは2つですが、 「パッヘルベルのカノン」13のテーマがあります。
同じ音部が同じテーマを繰り返すことはありません。 次々に新しいテーマが出され、それを輪唱する 形となっています。

大きな形式上の違いはカエルの歌は基本的に4声となる のですが、パッヘルベルのカノンは3声だという点です。
また、最後は第1バイオリンに2小節追加 し、第3バイオリンは2小節削ることにより、全員で一緒に 終わるようになっています。「カエルの歌」のように最後 一人で寂しく終わるということはありません。

曲の構成と演奏の難しさ

曲全体の構成と、カノンという構成のため、"聴かせる演奏" には難しさが生じます。
再び冒頭の図を載せます。

A,B,C..がそれぞれ4小節のテーマです。
"曲の強さ"には主観も入りっていますが、刻みの細かさ、メロディー の明確さが基本です。(Jは単独では好きなメロディーなのですが 構成上弱いと判断しました)

演奏で最も難しいのがFからJの部分で いかに停滞感を抑えるかです。

Aの4分音符から始まるテーマは序々に刻みを細かくし、Dにより 音域も一気に高め、Eの32分音符による華やかなテーマに 至ります。

Eは曲を通して最もきらびやかで魅力に溢れた部分です。おそらく 普通の人が思い浮かべるパッヘルベルのカノンというと、冒頭 とこの部分、それと後で述べるKの部分ではないでしょうか。

この曲の演奏上の難しさは、早い段階で曲のピークに達し その後少し低いテンションが続くことにあります。
次のピークはKに来ますが、かなり注意した演奏をしないと、 聴いている人間にとってFからJまでがとても平坦で曲の進行感 の乏しい不安を感じる音楽になってしまいます。

カノンという性格上、連続する異なるテーマがからみあう ことになります。
Eはとても印象深いテーマです。その分、次へのつながり が難しくなります。続くテーマはEが鳴っている上に重ねられる ので、Eを大事にするなら突出しない音である必要があります。
Fは結局Eの終了を待つことを主眼にしたつなぎとなっています。 Fは当然次のGの邪魔もしません。 Fの存在感は殆どなくEからGにつながると感じる人が多いでしょう。

華やかな主曲の前後につなぎの曲というパターン がこの後も続きます。主曲を大文字、つなぎを小文字で書けば E-f-G-h-I-j-Kという形です(もちろんつなぎといっても 良く考慮された美しい曲ではあります)。

図を見てもらえば分かる通り、例えばEは2つ後のGが 始まるまで鳴り続けています。
EやKなど印象深いテーマの多くは前2小節と後ろ2小節 が相似形をしています。前後でほぼ同じ音形を 演奏するということは、同じ音形が4回も繰り返される ことになります。(前後の形が違う場合は3回)
他の音との絡みが毎回異なるとは言え、聴き方に よってはしつこいものとなる恐れがあります。
これも3声のカノンの演奏の難しさの一つです。

Lは他のテーマとは違った様相をしています。第3,4小節で 盛り上がるのです。これはKの邪魔をせず次への盛り上げを する重要なところとなります。ただ、Lが期待させる盛り上がり をMがうまく受ける演奏を行わなければなりません。

どう演奏すべきか

ゆっくりした演奏も多いですが、手元の楽譜では(四分音符=63) の指定があり、かなり速めです。図上の音は(四分音符=60) です。速い演奏により中だるみを避けるのは有効です。
ちなみに、楽譜指定の速度では演奏時間は約3分半です。

原譜には指定されていない強弱を付け構成を明確にする ことも有効です。
例えば、Fで極端に小さくしIまで盛り上げ、Jはソロを聞かせ、 Kは強く、Lは前半は弱く後半はクレッシェンド、M以降は お祭り騒ぎといった感じです。

楽器、音域を変えるというのも有効でしょう。
例えばAの出足、第1バイオリンを1オクターブ 下げ、第3バイオリンはチェロにし2オクターブ下げると 「カノン感」が強まり聞く方の耳の準備が出来ます。

全く違う楽器に置き換えるのも有効でしょう。

通奏低音はハープのアルペジオにしたり、コントラバスのピチカート を入れたりといった工夫は良く見られますね。

一部カットというのも現実的な回答の一つだと考えています。

カットすることにより、余裕を持たせ、ゆったりとした演奏をする。

実はEの第2小節とKとは実に見事なつながりを聞かせます。上方へ向かって 投げるようなEの第2小節の音の形、それを受け取るようなKの音の形。

昔、自分たちの演奏をCDにするとき、収録時間の都合で、録音 済みの演奏にこのカットを 施しました(Fの2小節まで入れ、その後Kに飛びます)。 顰蹙(ひんしゅく)を買うかと心配したのですが、 おおむね好評でした。
普通に聞く分には綺麗だったのですが、分析的にはそこで"カノン" が切れているわけです。これがちょっと悔しいのですけどね。
さらにいうと、Dは2小節にして直ぐEに進めたかった、なども あります。
Lの後にもう一度Eを持って来るなどは ちょっとやりすぎでしょうけど。

### 補足(蛇足)

いずれ、テーマの並びを例えば"ABCEK"などと指定するとそれに沿って 演奏する"図"も作ります。

(2008/9/19)  ♪パッヘルベルのカノン切り貼り演奏機に作りました。

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