♪鏡の中のパガニーニ
ラフマニノフの「パガニーニの主題による狂詩曲」は
パガニーニの書いた単純な主題を元にした、
ピアノとオーケストラのための曲で、
24個の変奏曲から出来ています。
24曲全てそれぞれ魅力的ですが、とりわけ、
第18番変奏は抜きん出た美しさを持ちます。
全体を聞いたことがなくても、この第18変奏曲
だけは耳にしたことがあるのではないでしょうか?
出だしは次のようなメロディーを持ちます。
| 第18変奏曲出だしのメロディ |
このメロディーの元となっているパガニーニの主題はつぎの
ようなものです。
| オリジナル:ラドシラミ |
この主題から次の主題(ソミファソド)が得られています。
| 変奏:ソミファソドミ |
楽譜にしてみます。
オリジナルの主題はラドシラミ(イ短調:Am)。変奏は、絶対調を無視すれば、 調性記号なしでソミファソド(ハ長調:C)あるいは 調性記号を入れてミド#レミラ(イ長調:A)と表せます。
オリジナルと変奏を見比べると、上下をひっくり返したもの
となっていることが分かると思います。
一つの楽譜上においてみたものも載せました。緑の点線部分に
鏡を置くとオリジナルが変奏に変わることが分かるでしょう。
問題は、この鏡像関係を、耳で感じるかどうかです。
「第18変奏とされる曲のみが変奏ではなく ラフマニノフのオリジナルになっている」などと解説されている場合もります。鏡像関係に気が付いていないようです。
音楽の類似性の感じ方は人それぞれです。僕はこれを当然のように 鏡像だと感じました。正確には、18変奏の方を先に知っていたので 元主題が鏡像に聞こえたのですが。
オリジナルと鏡像を並べた演奏を用意しました。鏡像関係を感じるでしょうか?
| イ単調-ハ長調:Am-C:ラドシラミ-ソミファソド |
| イ単調-イ長調:Am-A:ラドシラミ-ミド#レミ |
ラフマニノフがこの「狂詩曲」を書いたのはこの美しい鏡像を思いついた
ためだと思います。
他の部分ももちろんすばらしいのですがが、どうしてもこの部分を光らせる
ためにあるような気がしてなりません。
### 補足(蛇足)
鏡像で2つの調を用意したのは、人によっては、イ単調-イ長調(ラで
始まってミで終わり、ミで始まってラで終わる)の方が
鏡像関係を感じやすいかな、と思ったことと、絵にしたときの
鏡像関係の分かりやすさにも違いがあるかなと思ったためです。
当初はイ単調-ハ長調のみでした。
### 蛇足-2
色んな曲の鏡像を使ってそれなりの曲にまとめ「鏡の世界」などというアルバムを誰か
作らないでしょうか。僕は買うでしょうが、、、やっぱりあまり売れないかも。。
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